■EU離脱案の否決で英ポンドはバイ・ザ・ファクト
為替市場では、Brexit(英国のEU離脱)問題が終盤を迎えていることもあって、英ポンドの乱高下が続いています。
1月15日(火)に、英議会で離脱案の採決が行われましたが、市場の予想どおり、否決となりました。
【参考記事】
●採決間近! 英首相は離脱延期を選択へ!? 米ドル/円は売り目線だが、当面は横ばい(1月15日、バカラ村)
英ポンド/米ドルは、採決前に否決を織り込み、発表直後に1.2674ドルまで下がりましたが、そこからはバイ・ザ・ファクトとなり、1.2888ドルまで戻しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
そして、翌日(16日)には、内閣不信任案の採決が行われましたが、こちらも否決されたことで、メイ首相が続投することになりました。
■チャートも英ポンドの上昇継続を示唆
為替市場では、合意なき離脱(※)の可能性が低下していることから、ここまで売られていた英ポンドの買い戻しも出て、底堅い展開が続いています。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
【参考記事】
●EU離脱案が歴史的大差で否決されたのになぜ、英ポンドは上昇しているのか?(1月18日、陳満咲杜)
チャートでは、英ポンド/米ドルは1月3日(木)に下ヒゲをつけ、1月15日(火)にも下ヒゲをつけました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
また、週足ではオシレーター系のテクニカル指標が、ダイバージェンス(※)しています。
(※編集部注:「ダイバージェンス」とは、相場の値動きとテクニカル指標の動き方が逆行すること)
(出所:Bloomberg)
英ポンドの買い戻しは、まだ継続していくのではないかと思います。
【参考コンテンツ】
●FX初心者のための基礎知識入門:ダイバージェンス
■米中貿易戦争懸念の後退でリスクオン
1月17日(木)には、ムニューシン米財務長官が、中国への関税を撤廃することを検討していると報道されました。すぐに否定はされたものの、翌日(18日)には中国が、2024年までに貿易不均衡是正に向けて、輸入を拡大することを示唆しました。
米中の貿易戦争懸念が後退して、リスクオンの展開となり、米ドル/円も109.89円まで上昇してきました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
■ドラギ総裁の会見はハト派に。ユーロの上値は重いか
今週(1月21日~)は、24日(木)にECB(欧州中央銀行)理事会があります。
政策金利は据え置かれる予想ですが、ドラギ総裁の会見に注目が集まります。
ECBは今年(2019年)秋以降に利上げの可能性がありましたが、これが後退しています。ドラギ総裁の発言も、15日(火)には、「十分な金融緩和がまだ必要」、「景気減速は長くなる可能性がある」と、ハト派な内容となっています。
今回のECB理事会後の総裁会見でも、同じようにハト派になることが予想され、ユーロは上値の重い展開となりそうです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
■ユーロ/英ポンドは長期的なレンジ下限をトライ
ユーロ/英ポンドは、週足では0.86ポンド台半ば~0.90ポンド台半ばのレンジが、1年以上、続いています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/英ポンド 週足)
そのレンジ上限(0.90ポンド台半ば)で、日足では横ばいとなっていましたが、0.89ポンド台半ばを下抜けてきており、長期的なレンジ下限である、0.86ポンド台半ばに向けて、下げるのではないかと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/英ポンド 日足)
基本的に、ユーロ/英ポンドは、戻り売りが良いのではないかと考えています。
■米ドル/円は中長期的に戻り売りで
米ドル/円は、リスクオンもあって、109円台で推移していますが、110円台には売りオーダーもあり、上昇がいったん、止まっています。
目先は、リスクオンとなっていることもあって、110円台に乗る可能性もあると考えていますが、中長期的には戻り売りではないかと考えています。
【参考記事】
●米ドル/円暴落は「上海ショック」と似ている!? 円高リスク緩和。目先は110円台へ反発か(1月8日、バカラ村)
(出所:Bloomberg)
■タカ派なFRBメンバーがハト派へ! 米ドル安になりやすい
今年(2019年)のFOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーで、タカ派として知られるジョージ・カンザスシティ連銀総裁が、1月15日(火)に、「中立金利に近づいている」、「金利正常化の休止に良い時期の可能性」と、ハト派な発言をしています。
米国株が堅調になると、利上げの思惑も出てくるとは思いますが、タカ派なジョージ・カンザスシティ連銀総裁までもがハト派な発言をしていることもあって、米ドル安になりやすいのではないかと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
また、米中の覇権争いやBrexit問題、景気鈍化懸念もあり、リスク回避となる可能性も十分にあると思います。
米ドル/円は、目先はまだ、リスクオンに傾きやすいですが、中長期では110円台以上では、売りで良いのではないかと考えています。
【参考記事】
●採決間近! 英首相は離脱延期を選択へ!? 米ドル/円は売り目線だが、当面は横ばい(1月15日、バカラ村)
●米ドル/円は110円あたりが当面の上限か!? 落ち着いた相場で取るべき投資戦略は…?(1月18日、今井雅人)
●米中融和で戻り余地大きいのは日経平均!? 英国は、EU離脱延期の可能性が高まる?(1月21日、西原宏一&大橋ひろこ)
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