■米中貿易摩擦が継続。通信機器での覇権争いへ
5月5日(日)にトランプ大統領が、中国からの輸入品2000億ドル相当に対する関税を、25%へ引き上げることを示唆してから、米中の貿易摩擦は継続しています。それまでは、合意が近いような状況だったのですが。
先週(5月13日~)も、米政府は、中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)への米ハイテク部品の輸出禁止を発表し、さらに5月20日(月)にはグーグル(Google)が、スマートフォン向けソフトの一部提供を停止すると発表しました。
ファーウェイ側は、中国市場では影響を受けないとしています。しかし、ハイテク部品に関しては、他の国からの調達や自国での調達も可能だと思いますが、グーグルのソフトに関しては、すべてを代替できないと思いますので、売上げが下がることになると思います。
ZTE(中興通訊)に続いて、ファーウェイも米国からの圧力を受け、通信機器での覇権争いが継続していることになります。
【参考記事】
●米国の対中関税第3弾が今週にも発動!? 米ドル安に誘導したいトランプはどう動く?(2018年9月3日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米政府がファーウェイ・ショックのタイミングを演出!? 市場も歓迎、株もドル/円も底打ち?(2018年12月7日、陳満咲杜)
■他国を後回しにしてターゲットを絞り込み!?
米国株も影響を受けることになりますが、先週(5月13日~)もトランプ大統領は、「中国との協議は成功すると思う」、「中国との交渉はうまくいく気がする」などの楽観発言を繰り返しており、株価の急落は免れています。
(出所:Bloomberg)
自動車関税も、最大180日間の延期を発表しており、こちらも株価にとってはプラスの材料です。
中国への圧力で株式市場が下がるのを少しでも緩和させるために、楽観発言や自動車関税の延期などを打ち出してきています。
そして、ターゲットも中国に絞ってきています。
自動車関税の延期は、日本とEU(欧州連合)に対してですので、それらを後回しにして、まずは中国をターゲットに絞った行動です。
日本とEUへの自動車関税延期を発表し、中国にターゲットを絞ったトランプ米大統領。米中の交渉に関しては、株価の下落を少しでも緩和させるために、楽観的な発言を繰り返しているが… (C) Chip Somodevilla/Getty Images
■米中の対立は長期化。でも株価が急落しないわけは?
米中の貿易摩擦が激化していますが、もし、両国が歩み寄ることができれば、これまでの動きが反転することになるため、リスク選好で株式市場も上昇することになります。
しかし、来年(2020年)に大統領選が控えており、そこでの点数稼ぎもあって、トランプ大統領も中国への圧力を緩めることはなく、中国側も折れるわけにはいかないため、米中の対立は長期化することが予想されています。
今は、株式を買っていくには難しい状況で、米中対立の材料が出るようであれば、そのときは株価は下がるため、基本的には戻り売りが良いような動きが継続すると思います。
(出所:Bloomberg)
要人の楽観発言もあるため、急落していくような動きにはならずに、戻りがあるような相場展開ではないかと考えています。
【参考記事】
●株式市場は緩やかな調整と見る理由は? クロス円は、しばらく戻り売りで良さそう(5月7日、バカラ村)
■トランプ大統領が圧力を緩めるタイミングは…?
6月下旬(6月28日~29日)のG20大阪サミット(首脳会議)の場で、米中首脳会談が行われる可能性もあり、その前にも合意が近いような発言や報道が出てくると思いますが、簡単には合意できないと思います。
もし、トランプ大統領が圧力を緩めるようなことになるとすれば、それは米国株が大きく下がったときになると思います。
米国株が大きく下がるようであれば、大統領選に不利になるため、崩れないようにコントロールしてくると思いますので、そのような状況にならない間は、米中の貿易摩擦は続くことなります。
■米ドル/円や豪ドル/円は戻り売りを継続
5月18日(土)に、オーストラリアで総選挙がありました。市場予想や世論調査では、野党の勝利が予想されていましたが、結果は与党が勝利し、5月20日(月)の豪ドルは、ギャップアップから始まっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 1時間足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 1時間足)
ただ、豪ドルを動かしている現在の材料は、米中貿易摩擦とRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])の利下げ観測です。総選挙は材料として弱いこともあって、その動きは継続していません。
米中貿易摩擦から、株式市場がまだ上がるような状況でもないため、米ドル/円や豪ドル/円などは、まだ戻り売りで良いのではないかと考えています。
【参考記事】
●目先の米ドル/円サポートは108円台半ば。中国人民元安に影響を受けやすい通貨は?(5月14日、バカラ村)
●米国からの圧力で急減速する中国経済! 利下げ予測もある豪ドル/円は70円へ…!?(5月16日、西原宏一)
●米中の関税合戦は世界経済にマイナス! 米ドル/円とクロス円はショート戦略で(5月16日、今井雅人)
●米中貿易戦争がある限り、リスクオンには戻らず!? 米ドル/円、豪ドル/円は戻り売りか(5月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
■一方的には下げにくい米ドル/円をうまくトレードするには?
米ドル/円に関しては、109円台前半は買いオーダーがあり、株価が下がったとしても、機関投資家の買いがあることから、一方的な下げにはつながりにくく、戻り売りを回転させていく方が、うまくいくのではないかと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
まだ、米中の貿易摩擦は着地点が見えず、リスク回避の動きは続くのではないかと考えています。
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