円売りポジションの調整はすでに一服? ユーロ買いはポジション調整にすぎない
先週(1月31日~)のユーロの大反転によって、相場の地合いが再度変動してきたが、より鮮明になるのは円売り方向の継続ではないかと思う。
要するに、ユーロの大幅切り返しで円売りの再開が確認され、懸念された円売りポジションの調整がすでに一服した可能性が高い。
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前回(2月4日)の本コラムで指摘したとおり、ユーロ/英ポンドやユーロ/米ドルの大幅な切り返しは、基本的に大型ユーロ安のトレンドがいったん「オーバー」の領域に入ったので、ユーロ売りポジションの整理が行われたためである。
【参考記事】
●ユーロは底割れの可能性が低下も、大幅高を想定するのは性急。米雇用統計後に続伸すれば、短期で「買われすぎ」が問題になるかも(2022年2月4日、陳満咲杜)
ユーロ安トレンドにおけるスピード調整であっても、トレンド自体を修正することはできない。
ユーロは、しばらく底割れのリスクを後退させたものの、これから大幅上昇、またブル(上昇)基調へ復帰する可能性は低い。
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言ってみれば、ユーロ/英ポンドにしても、ユーロ/米ドルにしても安値圏にて反発したものの、保ち合いを経てからまた大型ベア(下落)トレンドへ復帰し、再度、安値トライを果たす、というメインシナリオが、なお維持される。
したがって、問題はトレンド自体ではなく、その保ち合いがいつまで続くかであり、現時点では不明瞭であるのも事実である。
ユーロ/円におけるユーロ高は本物、上昇派継続となるだろう
もっとも、昨年(2021年)から大分ベアトレンドを推進してきたから、安値圏における比較的大きな反発であるだけに、しばらく続くかと推測される。
換言すれば、ユーロの大幅続伸は望めないが、レンジ変動においてやや強含みの展開が十分あり得るから、ユーロ売りポジションの解消が一気に行われた分、新たなユーロ売りの仕掛けがあっても、しばらく主導権を握れない公算が高い。
ゆえに、先週(1月31日~)のユーロ全体の大幅切り返しがもたらしたユーロ/円におけるユーロ高は本物で、2022年年初来高値の更新を果たしているだけに、昨年(2021年)年末安値を起点とした上昇波が継続するだう。
この場合、昨年(2021年)年末安値を「ヘッド」と見なし、昨年(2021年)8月、9月安値や2022年1月安値を「ショルダーズ」と数えてもおかしくないから、「ヘッド&ショルダーズ・ボトム(逆三尊)」というフォーメーションの成立もあり得る。
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(出所:TradingView)
要するに、ユーロ/円は、目先、高値トライの機運が高まり、昨年(2021年)10月高値133.50円や昨年高値134.15円を再トライする可能性が高い。
ちなみに、前述の「逆三尊」のフォーメーションが成立する場合はそれ以上に高値余地を拡大することになるが、そこまで狙わなくても、しばらく上値トライしやすい流れにあることは確かだ。
度々指摘したように、ユーロ/円はインターバンクにおいて直取引のあるクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)として影響力が大きい。
一般論として、米ドル全体がベアトレンドを強めていない限り、ユーロ高・円安の流れが強ければ、米ドル/円にとって下支えになる場合が多い。
ユーロ/円をはじめ、主要クロス円における底堅さが確認された目下において、円売りトレンドの再開が有力視される。
英ポンド/円は英ポンド高・円安の流れがしばらく継続
英ポンド/円では、昨年(2021年)12月安値148.97円から今年(2022年)年初の高値157.79円までの上昇幅がいったん削られたが、結局日足の終値で数えると、同上昇幅の半分以下に押せなかった。
1月25日(火)から連続して切り返しを果たし、再度2022年年初来高値をトライする勢いをみせ、しばらく英ポンド高・円安の流れを継続できると推測される。
ちなみに、英ポンド/円における2021年12月末の安値は、そもそも2021年安値148.45円を割れなかったので、2022年年初来の高値(1月高値)が昨年(2021年)高値(10月)に近かっただけに、これから再度高値トライ、また更新する可能性が高いとみる。
(出所:TradingView)
豪ドル/円は2022年年初来高値を再打診するだろう
豪ドル/円も英ポンド/円と同様、2021年12月安値まで大きく反落していたが、2021年安値を更新できなかった上、2022年1月高値までいったん大きく反発。
1月末までの再反落があったものの、80円の節目割れを回避できたので、2021年12月安値78.78円を起点とした上昇波に復帰してきた公算が高く、まず、2022年年初来高値の再打診につながりやすいと思われる。
(出所:TradingView)
こういった円安トレンドの再開を背景に、米ドル/円の底堅さも一段と鮮明になっており、再度上値トライしやすく、また、再度高値更新を果たすだろう。
なにしろ、2022年年初以来、日米株の大幅調整がすでに見られたにもかかわらず、米ドル/円は113円台前半にてすでにサポートされており、想定より大分底堅く推移してきた。よって、これからさらなる調整につながるというよりも、上値トライする可能性が高いと言える。
(出所:TradingView)
大きな背景として、やはりクロス円全般における円安の流れがあり、これに沿った方向なので、円が最弱の通貨であることを、より確認できる見通しだ。
円安トレンド自体が雄大で、進行の途中であることを再認識すべき
米株の反発が続いている中、円売りの再開が理解されやすい。半面、いわゆるリスクオン・オフの視点のみで捉える場合、困惑も生じるだろう。
なにしろ、仮に米株の調整がすでに完了したのであれば、いわゆるリスクオフの時期でも円高の余地が想定よりかなり限定された。円売りポジションの積み上げを背景とした買い戻しさえ、あまり見られなかったから、いくら円がもうリスク回避先ではなかったからと言っても、「弱すぎる」といった印象を払拭できない。
昨日(2月9日)の米株の大幅続伸で見られるように、目下、米株の反騰が続いており、リスクオンの円売りといったロジック自体間違いではないが、それだけでは説明しきれない。
相場のことを相場に聞く姿勢なら、円売りトレンドの健在は相場の内部構造から説明しないと合理性をもたない。つまるところ、円安トレンド自体が雄大で、進行の途中であることを再認識すべきだと思う。
しかし、円安トレンドの進行が確認できたとはいえ、また円安トレンドの進行で新たな安値を近々見られる可能性が大きいとはいえ、短期スパンにおいて無闇に円売りができるとは限らない。
今晩(2月10日)の米CPI次第で、株式相場がまた荒れる可能性が大きく、米利上げ周期入りに伴う不確実性から考えると、新たな安値を記録してから、円安トレンドがいったんピークを迎える可能性もある。
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そのあたりの話はまた次回、市況はいかに。
10:45執筆
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