■根拠なき傲慢による新型コロナ拡大でリスクオフの円安に
ダイヤモンド・プリンセス号に関する対応の仕方や政府の失態はもうすでにたくさん報道されたので、ここでは省略するが、2月19日(水)に検査結果が陰性とされる乗客500人は下船したあと、そのままバスやタクシーで帰宅(一説には横浜駅など駅まで送った)、その足で寿司屋まで行った乗客もあったと報道されている。
それを聞き、中国人なら全員呆れる、または言葉も出ないだろう。なぜなら、検査で陰性でも、ウイルスに感染している可能性が大きいことは中国においてたくさんの実例(血と涙で満ちた実例)で証明されたからだ。まず隔離することが基本中の基本なのに、日本の官僚は至って軽い判断を下す。
こういった大きな慢心の中、ついに安倍首相まで感染する可能性があったと報道され、日本は一体どうした(?)と厳しい目で見られても当然で、仕方がないだろう。
安倍政権による中国への過度な忖度が、防疫の始動に失敗したのは間違いないが、中国の医療レベルが低いから、日本なら何とかなるという根拠のない傲慢があったことも大きいのではないか。
政府も専門家も、また、民間にもそういった傲慢があったからこそ、本日(2月21日)に至るまでの混乱を招いたはずなので、また不謹慎な話になるが、それに大きな代償を払う時期がきたのではないかとも思う。要するに「リスクオフの円安」がこれから一段と加速していく公算は大きい。
(出所:Trading View)
■米ドル/円は大型三角保ち合いを上放れ、上昇加速か
米ドル/円のテクニカル分析上のポイントは鮮明である。2015年高値から形成された大型三角保ち合いに対する上放れが確認されたので、これから上昇が加速していくだろう。
(出所:Trading View)
なにしろ、保ち合いの期間が長ければ長いほど、その後のモメンタムは強いという法則があるから、米ドル/円の急伸に「押し目買いに押し目なし」というリスクも覚悟しておきたい。
昨年(2019年)4月高値の112.41円を超えれば、2018年高値の114.56円を照準にできるから、逆張りの円買いは禁物だと思う。
■新型コロナ感染拡大でも株は崩れることがないだろう
一方、株式市場については、たちまち崩れることはないと思う。中国をはじめとした、金融緩和や財政出動などの政策効果があり、また、その期待が大きいから、日本株を含め、なおブル基調を保てるだろう。
【参考記事】
●日本のGDPは衝撃の年率マイナス6.3%…。 悪材料で円安に!? 米ドル/円は115円へ!(2月20日、西原宏一)
ただし、仮に日本の防疫が失敗、中国の二の舞になった場合はどうなるかはわからないことを併記しておきたい。ちなみに、中国株は堅調で、深セン成分指数は2017年高値を更新し、2016年以来の高値をつけていることも併記しておく。
(出所:Bloomberg)
相場は「理外の理」、以前のコラムで書いたように、「新型肺炎の状況が悪くなればなるほど相場が上昇」といったロジックが効く可能性もある。
【参考記事】
●危の中に機あり。新型肺炎の危機感が強いほど、米ドル/円の上昇につながる!(2月7日、陳満咲杜)
とはいえ、為替市場に限定すれば、前述のように「悪い円安」の可能性が大きいから、仮に円安の加速があれば、そのときは新型肺炎が一段と蔓延し、混乱している状況も想定される。
この意味では、筆者自身の見方が間違うことを切に祈っている。市況はいかに。
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