2020年8月28日(金)午後、安倍晋三首相(内閣総理大臣)が辞任の意向を固めたと、大手メディアが一斉に報じました。
大手通信社の報道によると、辞任の理由は持病の潰瘍性大腸炎の悪化などによるものということ。このあと28日午後5時から、安倍首相の記者会見が行われます。
この報道を受け、株式市場では日経平均が一時、前日比600円超安まで急落、外国為替市場では円が急速に買われ、米ドル/円は106.70円台から一時106.10円台まで急落しました。
(出所:TradingView)
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■安倍政権内からも驚きの声、まさにサプライズ
2006年に戦後最年少の52歳で総理大臣に就任した安倍首相は、持病の潰瘍性大腸炎の悪化によってわずか1年足らずで一度は辞任したものの、その後、2012年12月に民主党(当時)政権から政権を奪還すると、第2次安倍内閣がスタート。
安倍首相は昨年(2019年)11月には、第1次政権とあわせた通算の在任期間が憲政史上最長となり、先日、2020年8月24日(月)には、連続の在任期間も2799日となって、大叔父の佐藤栄作氏を抜いて歴代最長となる長期政権を築き上げてきました。
持病の潰瘍性大腸炎が悪化したことなどで、辞任の意向を固めたと報じられた安倍首相。2020年8月24日(月)に連続の在任期間が2799日となり、歴代最長となる長期政権を築き上げてきた功績は大きい (C)Getty Images News
新型コロナウイルスへの対応などで、1月下旬から6月中旬までの連続勤務日数が147日にのぼっていた安倍首相。その後も土日に職務にあたることがあり、首相周辺などからも疲労の蓄積を心配する声があがっていました。
こうした中、8月16日(日)からの3日間の夏休み期間中に慶応義塾大学病院で日帰り検診を受け、その1週間後にも追加的な検査を行ったことが伝わっていましたが、その時点では近く記者会見を行う予定としながらも、「これから仕事をがんばりたい」と述べていました。
そのようなこともあり、8月28日(金)に記者会見が行われることは発表されていたものの、記者会見で辞任の意向を表明する可能性は低いとの見方の方がかなり多かったと思われます。たとえば、橋本聖子・男女共同参画相は辞任の意向の第一報を聞き、「え、うそー」と反応したとの報道もありました。
しかしながら、検査の結果、持病が悪化していることがわかったことなどから、国政に支障が出ないよう、安倍首相は辞任する意向を固めた模様です。金融市場にとってはサプライズとなりました。
(追記)8月28日(金)午後5時から安倍首相は会見を行い、辞任することを正式に発表しました。そして、「病気と治療を抱えて体力が万全でないなか、政治判断を誤ることがあってはならない」と辞任の理由を述べました。
また、この時期に辞任を発表したことについては、新型コロナウイルスの感染者が減少傾向に転じ、冬に向けた新対策を決定できたことから「新体制に移行するのであれば、このタイミングしかない」と判断したとのことでした。
そして、次の首相が任命されるまでは執務を続けることが表明されました。
■アベノミクスで上昇した株価と米ドル/円
安倍首相といえば、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」による経済成長を目指した政策運営「アベノミクス政策」の立役者。
日銀(日本銀行)と連携した大規模な金融緩和政策によって、日経平均は第2次安倍内閣発足前から3倍以上の水準まで上昇。また、為替市場では円安が進み、米ドル/円は戦後の変動相場制移行後の最安値水準から2015年6月には125.80円台の高値をつけるまで上昇しました。
(出所:TradingView)
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この間、安倍首相は2017年に就任した米国のトランプ大統領と良好な関係を築くなど、外交面でも高い評価を受ける一方、2度にわたる消費税の引き上げ実施や安全保障関連法の成立などを行ってきました。
■注目は「ポスト安倍」。いったい誰が…?
安倍首相の辞任によって今後、注目されるのは、安倍首相の後任、「ポスト安倍」になります。
自民党は9月にも総裁選を実施して次期総裁を選出する予定です。総裁選の時期や形式については二階俊博幹事長に一任されることが決まりました。現時点では、次期総裁候補として自民党内から石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長、河野太郎防衛相、菅義偉官房長官らの名前が挙がっているようです。
ちなみに、2020年7月に日本経済新聞社が行った世論調査では、自民党支持層の中では石破茂元幹事長が、次の首相にふさわしいという回答があったそうです。その次に小泉進次郎環境相、河野太郎防衛相、岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官、茂木敏充外相と続いています。
安倍首相の辞任、そして、安倍首相の後任に誰がなるかということは、当面、金融市場の動きに影響を与えることが考えられますので、今後の動向に注目です。
(ザイFX!編集部・堀之内智)
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