(「ザイFX!で振り返る2012年(1) 【マーケット動向・前編】ユーロ/円94円台へ」からつづく)
■ドラギ総裁の「Believe me…」発言からユーロが反転!?
ユーロ/円が94.10円台まで下落した直後の7月26日(木)、ECBドラギ総裁が「Believe me. It will be enough. Do whatever it takes to preserve the euro」(信じてくれ。十分な対応となる。ユーロを守るためにはできうることはすべてする)と発言したことを受けて、今度はユーロが急騰。
ECBから何らかの追加緩和策が打ち出されるのでは? と期待が高まり、その後、9月6日(木)のECB理事会で国債の買い入れを無制限で行うこと(OMT)が発表されました。
結果、ユーロは一段と上昇しましたね。

(出所:米国FXCM)
【参考記事】
●ドラギ発言で急速なリスクオンへ ユーロドル上限を見極めたい(7月27日、持田有紀子)
●ドラギ総裁の「Believe me」は本当か? ユーロの行方はECB理事会の発言次第!(8月2日、西原宏一)
■米・事前予想どおりQE3実施へ!
ECBに続き、9月13日(木)に開催された米FOMC(米連邦公開市場委員会)では、ついにQE3(量的緩和第3弾)の実施が発表されました。
住宅ローン担保証券(MBS)を毎月400億ドルずつ買い入れるというのがおもな内容。
翌14日(金)にかけては、リスクオン相場となり、ユーロ/米ドルは、1.31ドルまで上昇しました。

(出所:米国FXCM)
このほか、日銀も9、10月と異例の2カ月連続での追加緩和策に踏み切りましたが、ECBや米FOMCの緩和策に比べるとインパクトは小さいものにとどまったようです。
【参考記事】
●マーケットを興奮させるインパクトなし!?QE3実施決定の為替相場への影響は?(9月14日、陳満咲杜)
●日銀の発表で米ドル/円は上昇したが、あっという間に元に戻ったのはなぜ?(9月20日、西原宏一)
●米FOMCのQE3決定に続き、日銀も! 金融緩和で、為替は安定して円安方向へ(9月20日、今井雅人)
●日銀の追加緩和は円安効果をもたらさず。日米欧の「QE合戦」は日本に勝ち目なし!(9月21日、陳満咲杜)
■米大統領選後は「財政の崖」問題で右往左往…
11月6日(火)に実施された白熱の米大統領選も、忘れてはいけませんね。オバマ VS ロムニー。
前評判どおり、オバマ氏の再選で幕を閉じましたが、その後、NYダウは300ドル超も下落。いわゆる「オバマショック」が起こりました。
【参考記事】
●オバマ再選で相場の流れはどうなる? 米ドル/円は大きな上昇トレンドへ転換か(11月7日、松田 哲)
●オバマ氏の再選で米国金融株が急落!金利見通しが変わった豪ドルは急騰!(11月8日、西原宏一)
●想定どおりのオバマ再選にもかかわらず、「オバマショック」が起こったのはなぜか?(11月9日、陳満咲杜)
そして、次に注目されたのが「米財政の崖」問題。年末にかけては、当局者の発言でマーケットが一喜一憂し、やや方向感が定まらない状況が続きました。
■衆院解散&安倍相場の出現で一挙に円安へ?
このまま静かにクリスマスモードへ向かうのかな…? と思っていたところ、11月14日(水)突然、野田首相から衆議院の解散発言。11月16日(金)には衆議院を解散し、12月4日(火)公示、16日(日)投開票という年末総選挙に突入したのです。
次期政権与党の可能性がある自民党の安倍総裁は、より強力な金融緩和の必要性などについて発言。次期政権下では、日銀に対する追加緩和圧力が高まるのでは? との期待を背景に、米ドル/円が急上昇しました。
11月14日(水)野田首相の解散宣言時には80円前後でしたが、11月22日(木)には82.80円あたりまで上昇! 1週間ほどで2.8円も上昇しました。
安倍相場や安倍トレードと呼ばれるほど、急激な円安が進みましたね。

(出所:米国FXCM)
【参考記事】
●野田首相の決断と安倍総裁の大胆発言で円安に! 英国は新手の金融緩和を実施!(11月15日、西原宏一)
●海外勢の円売り強まり、円安が加速!2013年の米ドル/円ターゲット92円説も!(11月22日、西原宏一)
●年末にかけて米ドル/円は84円~85円へ!日銀法改正に向けた2つのポイントとは?(11月22日、今井雅人)
●80円台ミドルを明確に上抜けたドル/円に買いシグナル点灯! ターゲットは84円近辺(11月21日、松田 哲)
●米ドル/円の85円程度は通過点。なぜ長期円安時代が始まったと言えるか?(11月26日、陳満咲杜)
■自公圧勝の衆院選! マーケットは株高・円安傾向強まる!
12月16日(日)に行われた第46回衆院選では、全480議席中、自民党・公明党があわせて325議席(自民党単独では、294議席)を獲得し、定数の3分の2議席以上を占めることに。民主党は、議席を4分の1に減らす57議席と歴史的な(!?)大敗。第三極と騒がれた日本維新の会は、54議席を獲得し、第3党に躍進しました。
ちなみに、ザイFX!の人気コラム「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」の執筆者である今井雅人氏は、衆院選2度目となる当選を果たしています!
【参考記事】
●ザイFX!人気コラム執筆者・今井雅人氏、衆院選2度目の当選! コラムの復活は?(12月17日)
選挙結果を受けて、12月17日(月)のマーケットは、アジア時間オープンで米ドル/円、クロス円が上方向に窓を開けて取引をスタートしました。
12月14日(金)、83.50円あたりでNYクローズを迎えた米ドル/円ですが、12月17日(月)の始値は、なんと84.30円あたり。下のチャートのとおり、およそ80銭ほど値が飛びました。

(出所:米国FXCM)
この株高・円安の流れは、強い緩和姿勢を示す発言を繰り返してきた安倍総裁率いる自民党が政権を奪還したとあって、今後は、日銀に対する緩和圧力が高まるか!? との期待の表れかもしれませんね。
ザイFX!のコラム執筆者陣などの間では、「このまま円安傾向が続く」との見方が優勢なようですが…。どうなるのでしょうか?
【参考記事】
●宮田直彦氏に聞く(2012年-1) 米ドル/円は新たな長期米ドル高・円安時代に入った!(12月11日)
●宮田直彦氏に聞く(2012年-2) 米ドル/円は最低でも124円、さらに140-150円へ上昇も(12月12日)
●ドル/円の長期目標は最低でも119.8円!円安傾向は続くが、目先はやや行きすぎか(12月14日、陳満咲杜)
●米ドル/円は83円、ユーロ/円は108円の バリアを突破! 円安トレンドは継続!(12月18日、西原宏一)
■12月19日(水)、米ドル/円が84.60円台まで上昇!
衆院選直後の12月17日(月)のオープンは、上述のとおり上方向に窓を開けてスタートしましたが、翌日は調整相場となり、米ドル/円、クロス円はやや軟調。円安傾向とはいえ、このまま年内は、17日(月)の高値を更新しないのかなぁ…? と思われましたが、もう一波乱ありましたね。
12月19日(水)、20日(木)に公表予定だった日銀金融政策決定会合での追加緩和期待(12月20日に10兆円規模の追加緩和を発表)や米財政の崖問題の解決期待、ギリシャ問題への懸念の後退などが相まって、マーケットはリスクオンの流れに…。
ちなみに、この日、日経平均は約8カ月ぶりに1万円の大台を回復しました。
為替は、海外時間にかけて米ドル/円、クロス円がグングン上昇し、一時米ドル/円は2011年4月以来となる84.60円台、ユーロ/円は2011年8月以来となる112.50円あたりをつけたんです!

(出所:米国FXCM)
果たして、2013年も引き続き、円安基調は続くのでしょうか? 一部では、大胆な金融緩和を提唱する自民党安倍総裁の経済政策を「アベノミクス」という造語で呼んでいるようですが…こうした日本国内の政策も今後の為替動向に深くかかわってくるのかも? しれません。
ますます、目が離せませんね。
マーケット動向に続いて、次は、FX業界の動向について振り返ってみたいと思います。
(「ザイFX!で振り返る2012年(3) 【FX業界の動向:前編】スプレッド競争激化」へつづく)
(ザイFX!編集部・向井友代)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)