■円高傾向は継続中だが、それが限定的である理由とは?
閑話休題。要するに目先の日本株の戻しはスピード調整であり、中期スパンにおけるベアトレンドを修正するにはほど遠い。株安・円高のセットで考える場合、当然のように、円高傾向がなお継続中という判断を維持できる。
しかし、日経平均が1万4000円以下で引けたとしても、米ドル/円が101円割れを回避したように、円高のモメンタムは決して高くなかったのも事実だ。それは他ならぬ、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)、特にユーロ/円における円高モメンタムが高まらないことに起因していると思う。
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円高トレンドの加速は、米ドル/円ではなく、主要クロス円が軒並み下落しないと、なかなか見られないのが経験則でわかる。やはり、ドルインデックスが低迷している間は、円高傾向があっても限界ありというところが大きい。
つまり、ドルインデックスの軟調は、外貨が米ドルに対して堅調であることを意味するから、円に対する外貨もなかなか弱くならず、円高傾向があっても限定的になる場合が多い。そして、ユーロ/円などクロス円における円高モメンタムが限られると、米ドル/円にも影響を及ばすから、米ドル/円の下値余地も限られるという構図である。
したがって、これから米ドル/円が100円の大台を割り込めるかどうかは、ユーロ/円などクロス円の動向から考えなければならない。ユーロ/円に限定して言えば、結局、ユーロ/米ドルの動向に左右されるという話だ。
■「ドラギ・ショック」が再現される可能性大!
ユーロ/米ドルに関しては、3月には一時1.4000ドルの節目に迫っていたが、足元の基調から考えると、再度この大台をめざす可能性は小さくなっていると思う。ファンダメンタルズとテクニカルの両方から、こういったシグナルが見られる。
(出所:米国FXCM)
まず、ファンダメンタルズの面では、ユーロ高に寄与する要素がいろいろ語られるが、決定的な部分はやはりECB(欧州中央銀行)が本格的なQE(量的緩和)政策を実施していなかったところが大きい。日米の量的緩和規模と比べ、EU(欧州連合)圏の政策が質・量ともに著しく貧弱であったがゆえに、ユーロのリバウンドが長続きしてきた経緯がある。
しかし、ドラギECB総裁が明言してきたように、ユーロ高を抑制するため、ECBは本格的にQE政策の導入を考えるようになり、また、その気運が高まっている。主要中央銀行のうち、もっとも遅くQE政策に踏み込もうとするECBのスタンスは、ユーロを反転させる要素として、決して過小評価すべきではないと思う。
通貨高の有無をQE政策の前提条件に挙げているほど、ECBは追い込まれており、近々「ドラギ・ショック」が再現される可能性は極めて大きいと思う。
■ウクライナ危機がユーロに暗い影
その上、ウクライナ危機はこれからユーロに暗い影を落とすだろう。ウクライナにおける全面衝突、つまり、全面戦争といった選択肢はなかなか現実的ではない分、欧米対ロシアの冷戦が新たに勃発すると思われる。
ロシアにとって、最大の貿易相手はEUであり、また、エネルギー供給ではロシアとEUの駆け引きが長期間続くとみられる。したがって、ユーロはリスク選好の視点から継続的に買われる公算が小さい。ユーロ高は、かなり限界一杯のところにきているとみる。
もちろん、いくらファンダメンタルズを言っても、正確に相場は測れない。やはり、テクニカル上の根拠なしでは無理がある。テクニカルの部分に関する詳説は、また次回に譲りたい。
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