(「 ザイFX!で2015年を振り返ろう!(1) 2つのショックの背後に大きなテーマあり」からつづく)
■米ドル/円は2007年6月高値を突破し、125円台後半へ上昇
ここからは、2015年の米ドル/円の動きを見ていこう。
米ドル/円は、2015年1月は下落が目立ち、121円近辺から116円水準まで下落した。
【参考記事】
●円高の背景に原油安とヘッジファンドあり。円高相場が長続きしないと考える理由は?(1月15日、西原宏一)
その後、2~5月は、116円水準~121円台でのレンジ相場に…。しかし、それ以降は、米ドル高・円安が進み、5月28日(木)には、チャート上の節目となっていた2007年6月高値となる124.16円を突破すると、6月5日(金)には、一時、125.87円まで上昇した。
【参考記事】
●ドル/円が2007年高値124.16円を上抜け! 長い長い円高トレンドは転換したのか?
●ドル/円は一時、122円台半ばへ急反落! ドル高をけん制した米当局の目的とは?(6月11日、西原宏一)

(出所:CQG)
■黒田総裁の円安けん制発言で米ドル/円急反落
しかし、6月10日(水)の衆議院財務金融委員会で日銀の黒田総裁が、「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れていくことは普通に考えると、なかなかありそうにない」と発言したことから状況が一変し、米ドル/円は急落した。
【参考記事】
●本音ポロリ!? 黒田総裁発言の真意とは?一時的な影響で再びドル高・円安に戻るか(6月11日、今井雅人)
そして、この黒田日銀総裁が発言したときに米ドル/円が推移していた124円台後半から125円近辺は、「黒田ライン」という通称で呼ばれるようになり、上値の抵抗として意識されるようになった。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
その後、「黒田ライン」を突破して、再び125円台を回復する場面も見られた米ドル/円だったが、前回でも取り上げたように、8月に発生した「チャイナショック」により、リスク回避の円高が進むと、米ドル/円は、124円近辺から116.00円台まであっという間に急落した。
【参考記事】
●NYダウが一時、1000ドル以上の大暴落! セリングクライマックスはいつなのか?(8月25日、西原宏一&松崎美子)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
もっとも、2015年の米ドル/円の動きはここまでがハイライト…。
「クジラ」と呼ばれる公的機関の円売り・日本株買いが入ったことなどから、2015年後半も米ドル/円が上昇する場面は見られたものの、市場が期待していた日銀の追加緩和、いわゆる「黒田バズーカ3」は出なかったことから、明確な方向感は出ず、米ドル/円は118円台前半から123円台半ばでのレンジ相場を続けたのだった。
【参考記事】
●黒田バズーカ3はまだ出ず。日銀追加緩和見送りで米ドル/円急落も短時間で反発!

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
■2015年はギリシャのデフォルト問題もテーマのひとつに
そして、2015年といえば、ギリシャのデフォルト問題も忘れてはならないテーマのひとつだ。
これは、1月25日(日)に実施された総選挙で、野党の急進左派連合(Syriza、シリザ)が、サマラス首相率いる与党、新民主主義党(ND)を破って勝利したことに始まる。
【参考記事】
●ギリシャは借金を踏み倒すのか!? 反緊縮派・急進左派連合圧勝でユーロ急落
そもそもギリシャは、2009年10月の政権交代をきっかけに、ユーロ加盟の条件である、名目GDP比の財政赤字について、虚偽の発表を行っていたことが発覚…。
これを受けて、ギリシャはデフォルト危機に陥ったものの、厳しい緊縮財政を条件にEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)から、2010年5月と2012年2月の2回に渡って、総額2400億ユーロに及ぶ支援を受けていた。
そして、今回の総選挙では、その緊縮財政路線の是非が争点となっていたのだが、「反緊縮財政」を掲げる急進左派連合(Syriza)が勝利したことで、国民が緊縮財政政策にノーを突きつけたわけだ。
その後、有利な条件で支援を受けたいチプラス首相率いるギリシャ側と、あくまで緊縮財政路線の継続を条件とするEU側との間で、支援の延長について交渉が繰り返し行われたものの合意には至らず…。
【参考記事】
●土曜日の会合でギリシャ支援延長ならず! ギリシャ破綻なら、ユーロ相場はどう動く?
結局、ギリシャは資本規制を導入し、銀行はすべて休業という事態となったほか、6月末となっていた期限内にIMFへの債務を返済することができず、事実上のデフォルト状態に陥ることとなった。
【参考記事】
●ギリシャが資本規制導入、銀行は休業! 週明けの為替はユーロ全面安+円全面高!
■国民投票は再び「ノー」も、ギリシャはデフォルトを回避
さらに、7月5日(日)には、ギリシャの緊縮財政策の是非を問う国民投票が実施されたのだが、「反対」が「賛成」を大きく上回る結果に…。
ここでも、ギリシャ国民は、EU側が示していた緊縮財政策にまたしても「ノー」を突きつけたのだった。
【参考記事】
●ギリシャ国民投票は驚きの「ノー」!危機的状況だが、ユーロ下落も案外平穏?
この国民投票の結果により、チプラス首相は民意を盾にさらに強硬な姿勢で交渉に臨んでくることが予想され、ギリシャのユーロ圏離脱の可能性がさらに高まるかに思われた。
ところが、ここから急転直下、事態は数日で一気に進展することになる。
【参考記事】
●ギリシャ支援はまたしても合意ならず…。信用失墜でEU側は新たな条件を要求!
ギリシャは、EUから新たな金融支援を受ける条件となっていた財政改革案を提出。その内容は驚くことにEU側の要求をほぼ受け入れるものとなっていた。
さらに、これまでの経緯からギリシャが財政改革を本当に実行できるのか、疑問視する声が挙がる中、EU側はギリシャに対して財政改革案の法制化を要求。
これについてもギリシャ側が受け入れたことにより、7月12日~13日にかけて開催されたユーロ圏首脳会議にて、ギリシャへの金融支援が決定。ギリシャのデフォルトは回避され、ユーロ圏にも留まることとなった。
■ギリシャ問題で大揺れでもユーロは底堅さを示す
ギリシャをめぐって、これだけ短期間にユーロ圏を震撼させる出来事が起きたのだから、ユーロの下落も相当だったのではないかと思われた人もいるはず。では、ここで、ユーロの動きを見てみよう。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 週足)
2015年前半は、ギリシャ問題でユーロ圏は揺れていた。とくに2015年6月から7月ごろにかけては、ギリシャ支援合意に向けて、毎週のようにユーロ圏財務相会合が開催され、ギリシャ国民投票が実施されるなど、さらに大揺れとなっていた。
ところが、同時期のユーロ相場を見てみると大きく売られるような動きにはなっていなかった…。
以下のユーロ/米ドルのチャートもご覧いただきたい。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
こちらを見てもらうとわかるように、2015年6月から7月にかけて、ユーロ/米ドルは下落するどころか、むしろ底堅さを示していたことがわかる。
つまり、ギリシャ問題で大揺れに揺れたイメージに反して、その最中に、ユーロはそれほどは売られていなかったというわけなのだ。
■2015年後半、原油相場は30ドル台に突入…
ところで、2015年は原油相場が大きく下落したことも、金融市場で注目された話題の1つだった

(出所:CQG)
そもそも原油相場が下落を開始したのは2014年半ばから。2014年後半は大変なスピードで原油安が進んだ。
【参考記事】
●ザイFX!で2014年を振り返ろう!(2) 【相場:後編】黒田バズーカで円安進む!
そして、2015年に入ってからは、反発局面もあったものの、6月ごろからは再び下落基調に回帰すると、年後半にかけてはさらに一段と原油安が進む展開で、12月21日(月)には、約6年10カ月ぶりに、一時、1バレル=33ドル台まで下落した。

(出所:CQG)
2015年年初は60ドル台だったから、1年間でほぼ半値になったわけだ。こうして見ると、かなり大きな下落だったことがわかる。
こうした動きを受けて、加ドルやロシアルーブルといった産油国通貨も、2015年半ばから軒並み下落した。

(出所:CQG)

(出所:CQG)
一方、これも資源国通貨である豪ドルやNZドルといったオセアニア通貨は2015年前半はかなり下落したものの、後半になると、原油相場の急落にも関わらず、意外に底堅さを見せ、珍しい動きとなった。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 週足)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/米ドル 週足)
ここまで2015年のマーケット動向を振り返ってきたが、いかがだっただろうか。
今年は、記事の中で取り上げた欧・米の金融政策の方向性の違いがより明確になるなど、昨年(2014年)にも増して「金融政策」が大きなテーマとなった年だったのではないだろうか。
そして、ECBのさらなる追加緩和はあるのか? 日銀はどう動く? 米国の利上げペースはどうなる?……などなど、注目材料盛りだくさんの2016年はどんな相場が待っているのだろうか?
(「ザイFX!で2015年を振り返ろう(3) GMOとDMMの取引高争いに老舗が迫る!?」へつづく)
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