(「ザイFX!で2019年を振り返ろう!(1) 大暴落後は動かない、動かない、動かない」から続く)
「ザイFX!で2019年を振り返ろう」と題し、3回に渡ってシリーズ記事をお届けしている。前回の記事では、ブレグジットや米中貿易協議など、2019年の為替市場で起こった出来事について振り返ってきたのだが、ここからは、2019年のFX業界動向やザイFX!の新コンテンツについて振り返ってみよう。
■2019年後半に米ドル/円スプレッド競争が勃発!
2019年のFX業界を振り返ると、年初にフラッシュ・クラッシュで動いたあとは、米ドル/円相場が動かなかったこともあって、盛り上がりに欠けるのかな……と思っていたら、2019年9月~10月にかけて勃発したのが、FX各社が一斉に米ドル/円のスプレッドを縮小する、いわゆる「スプレッド競争」だった。
以下は、2019年9月~10月にかけての、主要FX会社の米ドル/円スプレッドの推移を示したもの。
(出所:FX各社の公式ウェブサイトのリリースを基にザイFX!編集部が作成)
こちらをご覧いただくと、2019年9月~10月にかけて、FX各社が米ドル/円のスプレッドを引き下げたことがわかる。
その中でも、FX各社が一斉にスプレッド縮小に踏み切ったのは、2019年10月15日(火)だった。
【参考記事】
●10月15日の異変!? ドル/円0.2銭原則固定へ! 「連鎖的スプレッド縮小騒動」の衝撃
FX会社 [サービス名] |
開始時刻 | 米ドル/円 スプレッド |
通常/ キャンペーン |
楽天証券 | 9時~ | 0.2銭 原則固定 | キャンペーン(※) |
GMOクリック証券 [FXネオ] |
17時~ | 0.2銭 原則固定 | 通常スプレッド |
外為どっとコム [外貨ネクストネオ] |
17時~ | 0.2銭 原則固定 | キャンペーン(※) |
DMM.com証券 [DMM FX] |
17時30分~ | 0.2銭 原則固定 | 通常スプレッド |
外為ジャパンFX | 18時~ | 0.2銭 原則固定 | 通常スプレッド |
YJFX! [外貨ex] |
19時~ | 0.2銭 原則固定 | 通常スプレッド |
※楽天証券と外為どっとコムについては、当初キャンペーンでのスプレッド縮小だったが、現在は通常スプレッドで0.2銭原則固定となっている。
10月15日(火)だけで、なんと、主要FX会社6社が米ドル/円のスプレッドを0.3銭原則固定から0.2銭原則固定に引き下げたのだった。
0.3銭から0.2銭へわずか0.1銭の縮小だが、取引量でスプレッドが変化するSBI FXトレードを除くと、0.3銭原則固定が長い間、実質的な業界トップ水準になっていて、FX各社は、スプレッドをこれより明確に狭くすることはなかった。
10月15日(火)は、そのサポートラインが一気に決壊し、主要FX会社が続々と0.2銭の新たな領域へ踏み込んだ日になったということだ。
さらに、その翌日(10月16日)には、トレイダーズ証券[みんなのFX]が米ドル/円の通常スプレッドを0.3銭原則固定から0.2銭原則固定に引き下げたのに加えて、さらにキャンペーンスプレッドで0.1銭原則固定とし、1日でスプレッドを0.2銭縮小させたのだった。
また同日には、FXブロードネットが米ドル/円スプレッドを0.3銭原則固定から0.2銭原則固定に縮小させるというように、10月15日(火)~16日(水)にかけて、FX各社の米ドル/円スプレッド縮小が相次いだ。
【参考記事】
●特別寄稿:FX会社の為替ディーラーが考える連鎖的スプレッド縮小騒動が起こったワケ
■ゴールデンウェイ・ジャパンは米ドル/円0.1銭原則固定
このように、10月中旬にFX各社で相次いだ米ドル/円のスプレッド縮小だが、実は、その前にすでに米ドル/円のスプレッドを縮小させていたFX会社があった。
それが……ゴールデンウェイ・ジャパンだ。
ゴールデンウェイ・ジャパンは、旧FXトレード・フィナンシャルのこと。同社が香港系の金融グループであるゴールデンウェイの傘下に入り、2019年4月1日(月)から社名変更したものだ。
【参考記事】
●FXTFに劇的変化の予感! ゴールデンウェイ傘下入りで新システム追加&社名変更も!?
●FXTFがゴールデンウェイ・ジャパンへ! 社名変更でサービス自体は変わったの?
そのゴールデンウェイ・ジャパンでは、2019年9月25日(水)より、米ドル/円の通常スプレッドを0.3銭原則固定から0.2銭原則固定に縮小していた。
さらにゴールデンウェイ・ジャパンは翌9月26日(木)に「日本No.1最狭スプレッド挑戦計画」を発表。

これは、主要5通貨ペア(米ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/米ドル、ユーロ/円、豪ドル/円)のスプレッドについて、ゴールデンウェイ・ジャパンが定める基準に則って競合各社と比較し、競合各社がゴールデンウェイ・ジャパンと比べて低スプレッド水準にあることが判明した場合、すみやかに「最狭」もしくは「最狭と同等」のスプレッドを回復すべく、スプレッド縮小を行うというものだ。
そして、ゴールデンウェイ・ジャパンは2019年10月16日(水)、通常スプレッドを0.2銭原則固定から業界トップ水準の0.1銭原則固定へ縮小させた。
【参考記事】
●ドル/円スプレッド夢の0.1銭原則固定! 単独首位に見えないけど最狭な理由は?
米ドル/円0.1銭原則固定は、先ほど紹介したように、トレイダーズ証券がキャンペーンスプレッドとして実施していたが、2019年12月19日(木)現在、そのキャンペーンは終了している。今、主要FX会社で通常スプレッドを0.1銭原則固定で提供しているのは、1~1000通貨まで0.09銭原則固定で提供しているSBI FXトレードを除くと、ゴールデンウェイ・ジャパンだけだ。
FX会社 [サービス名] |
米ドル/円 スプレッド |
SBI FXトレード |
0.09銭原則固定 (※1~1000通貨まで) |
ゴールデンウェイ・ジャパン(旧FXトレード・フィナンシャル) [FXTF MT4・1000通貨コース] |
0.1銭 原則固定 |
SBI FXトレード |
0.17銭 (※1001~100万通貨まで) 12/21までのキャンペーン |
GMOクリック証券 [FXネオ] |
0.2銭 原則固定 |
YJFX! [外貨ex] |
0.2銭 原則固定 |
セントラル短資FX [FXダイレクトプラス] |
0.2銭 原則固定 |
トレイダーズ証券 [みんなのFX] |
0.2銭 原則固定 |
トレイダーズ証券 [LIGHT FX] |
0.2銭 原則固定 |
DMM.com証券 [DMM FX] |
0.2銭 原則固定 |
IG証券 [標準] |
0.2銭 原則固定 |
FXブロードネット [ブロードライトコース] |
0.2銭 原則固定 |
FXブロードネット [ブロードコース] |
0.2銭 原則固定 |
外為ジャパンFX | 0.2銭 原則固定 |
楽天証券 | 0.2銭 原則固定 |
マネックス証券 [FX PLUS] |
0.2銭 原則固定 |
ヒロセ通商 [LION FX] |
0.2銭 原則固定 |
外為どっとコム [外貨ネクストネオ] |
0.2銭 原則固定 |
JFX [MATRIX TRADER] |
0.3銭 原則固定 |
マネーパートナーズ [パートナーズFX] |
0.3銭 原則固定 |
インヴァスト証券 [トライオートFX] |
0.3銭 原則固定 |
※すべて例外あり
【参考コンテンツ:最新の米ドル/円スプレッドはこちらでチェック!】
●FX会社徹底比較!:取引コストで比べる[米ドル/円スプレッドの狭い順]
2019年後半に入って勃発した米ドル/円のスプレッド競争について紹介してきたが、もっと詳しく知りたい人は、以下の【参考記事】をご覧ください。
【参考記事】
●10月15日の異変!? ドル/円0.2銭原則固定へ! 「連鎖的スプレッド縮小騒動」の衝撃
●「連鎖的スプレッド縮小騒動」続報。米ドル/円はついに0.1銭原則固定へ!
■新たに6社がメキシコペソ/円の取扱い開始
次に紹介するのは、新興国通貨の中でも人気のあるメキシコペソについて。こちらは、昨年(2018年)の振り返り記事でも紹介したが、2019年もメキシコペソの取扱いを開始する会社が多かった。
2019年に新たにメキシコペソを取扱い通貨に加えたFX会社は、GMOクリック証券[FXネオ]、ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF MT4]、マネースクエア、JFX[MATRIX TRADER]とトレイダーズ証券[みんなのシストレ]、SBI FXトレードの6社。
なかでも、GMOクリック証券は7年連続FX取引高世界第1位という超有力FX会社だけに、2019年7月から同社が好スペックでメキシコペソ/円の取扱いを開始したことが業界に与えた影響は大きかった。このことについは、あとでもう少し詳しく触れる。
【参考記事】
●GMOクリック証券のメキシコペソ/円取扱い開始をきっかけにスプレッド縮小合戦勃発!?
さて、メキシコペソといえば、トルコリラと同様に高金利が魅力の通貨だ。

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
主要各国の政策金利を記者が調べたところ、2019年12月現在のメキシコの政策金利は7.50%。今年(2019年)、メキシコは利下げが3回(合計で0.75%)あったが、トルコに次ぐ高水準を維持している。
利下げを3回も実施すれば、メキシコペソ/円のスワップポイントにも影響があったはず。何か、大きな変化はあったのだろうか?
以下は、メキシコペソ/円を取扱うFX会社の中でも、スワップポイントが上位のもののみを挙げたもの。
FX会社 [サービス名] |
メキシコペソ/円 スワップポイント |
アイネット証券 [ループイフダン] |
16円 |
GMOあおぞらネット銀行 [GMOあおぞらFX] |
14円 |
FXプライム byGMO [選べる外貨] |
14円 |
ゴールデンウェイ・ジャパン(旧FXトレード・フィナンシャル) [FXTF MT4] |
11円 |
ヒロセ通商 [LION FX] |
11円 |
JFX [MATRIX TRADER] |
11円 |
IG証券 [標準] |
11円 |
セントラル短資FX [FXダイレクトプラス] |
11円 |
トレイダーズ証券 [LIGHT FX] |
10円 |
トレイダーズ証券 [みんなのFX] |
10円 |
マネースクエア [マネースクエアFX] |
10円 |
楽天証券 [楽天FX] |
10円 |
楽天証券 [楽天MT4] |
10円 |
これを見るとスワップポイントは、1万通貨あたり16円が業界トップ水準となっている。
昨年(2018年)末と比較すると、業界トップ水準の16円にだけ着目すれば、昨年(2018年)末に業界トップ水準だった15円を上回っている。また、全体的に見ると若干下げ気味なのだが、その下げ幅は軽微なものに留まっている。つまり、メキシコでは2019年に利下げが3回行われたのだが、にもかかわらず、メキシコペソ/円のスワップポイントについては、それほど大きな影響が出ていないということだ。
昨年(2018年)末のメキシコペソ/円のスワップポイントについては、以下の【参考記事】をご覧ください。
【参考記事】
●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(2) FX業界はトルコとメキシコで盛り上がった!
なお、メキシコペソ/円のレートは2019年12月中旬現在、おおよそ5.65円。このレートで計算すると、16円というスワップポイントは年利10%を超えることになる。この数値はメキシコの政策金利7.50%を上回っていて、政策金利以上にいいスワップポイントがつく状態になっている。FX会社間の競争の激しさがうかがわれる数値だ。
次に、メキシコペソ/円のスプレッドだが、こちらは、先ほども紹介したように、メキシコペソ/円を取扱うFX会社が増えたことで、スプレッド競争が勃発した。
【参考記事】
●GMOクリック証券のメキシコペソ/円取扱い開始をきっかけにスプレッド縮小合戦勃発!?
2019年7月にGMOクリック証券が0.4銭原則固定という、当時の業界トップ水準でメキシコペソ/円の取扱いを開始したことをきっかけに、外為どっとコム、セントラル短資FX、トレイダーズ証券といったメキシコペソ/円を取扱うFX会社が相次いでスプレッドを縮小させたのだ。
以下は、最新のメキシコペソ/円のスプレッドをまとめたものとなっている。
FX会社 [サービス名] |
メキシコペソ/円 スプレッド |
外為どっとコム [外貨ネクストネオ] |
0.2銭 原則固定 ※12/21までのキャンペーン |
セントラル短資FX [FXダイレクトプラス] |
0.2銭 原則固定 ※12/20までのキャンペーン |
GMOクリック証券 [FXネオ] |
0.3銭 原則固定 |
マネーパートナーズ [パートナーズFX] |
0.3銭 原則固定 |
トレイダーズ証券 [みんなのFX] |
0.3銭 原則固定 |
トレイダーズ証券 [LIGHT FX] |
0.3銭 原則固定 |
ヒロセ通商 [LION FX] |
0.3銭 原則固定 |
JFX [MATRIX TRADER] |
0.3銭 原則固定 |
ゴールデンウェイ・ジャパン(旧FXトレード・フィナンシャル) [FXTF MT4] |
0.3銭 原則固定 |
楽天証券 [楽天FX] |
0.5銭 原則固定 |
※スプレッドが原則固定制の店頭FXは、24時間、上表のスプレッドが適用されるFX会社と、日本時間の8時~28時など主要な時間帯のみ上表のスプレッドが適用されるFX会社がある。スプレッドはすべて例外あり
直近のメキシコペソ/円のスプレッドを見ると、どちらもキャンペーンスプレッドとなっているが、外為どっとコム[外貨ネクストネオ]とセントラル短資FX[FXダイレクトプラス]が0.2銭原則固定で業界トップ水準。
そして、GMOクリック証券[FXネオ]、マネーパートナーズ[パートナーズFX]、トレイダーズ証券[みんなのFX]、[LIGHT FX]、ヒロセ通商[LION FX]、JFX[MATRIX TRADER]、ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF MT4]が0.3銭原則固定で続いている。
昨年(2018年)末のメキシコペソ/円のスプレッドは0.4銭原則固定が業界トップ水準だった。2019年末はそのトップ水準が0.2銭原則固定になったわけだから、幅で言えば0.2銭の縮小だが、率で言えば50%の縮小とも言える。2019年はFX会社がメキシコペソ/円のスプレッドをかなり縮小した年だった。
【参考記事】
●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(2) FX業界はトルコとメキシコで盛り上がった!
なお、ザイFX!では、メキシコペソ/円のスペックが比較できるコンテンツを用意しているので、こちらも参考に。
【参考コンテンツ】
●メキシコペソ/円が取引できるFX会社を徹底比較! スワップポイントやスプレッドは?
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