(「ザイFX!で2018年を振り返ろう!(2) FX業界はトルコとメキシコで盛り上がった!」からつづく)
ここまでFXの相場や業界動向に関して、1年間のできごとを振り返ってきた「ザイFX!で2018年を振り返ろう!」シリーズ。3本目となる当記事では、仮想通貨の話題をお伝えしたいと思います。
【参考記事】
●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(1) 米ドル一強! その時トルコショックが起きた
●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(2) FX業界はトルコとメキシコで盛り上がった!
■暗黒時代到来? ビットコインは再び史上最高値へ向かう!?
2017年のドンチャン騒ぎが夢かまぼろしだったかのように、相場的にも出来事的にも、あまり明るい話題に恵まれなかった2018年の仮想通貨。
業界では、1月にCoincheck(コインチェック)、9月にZaif(ザイフ)と、有名取引所で巨額の仮想通貨流出事件が勃発…。相場を見ても、2017年末には230万円台に到達したビットコイン価格が、2018年末には、一時40万円を割り込む始末…。
暗黒時代到来かよ!?
(リアルタイムチャートはこちら → 仮想通貨リアルタイムチャート:ビットコイン/円(BTC/JPY) 週足)
チャートを見ると、2018年年初から急激に下落し、その後は60万円付近で何度か反発したものの、2018年11月に起こったBCH(ビットコインキャッシュ)ハードフォークが決定打となって、ついに60万円を決壊。年末にかけて下落スピードを加速させました。
史上最高値へ向けて上昇を続けていた2017年末の動きとは、あまりに対照的な光景ではありませんか…。
「仮想通貨は、もうアカン…」 そんな空気も一部では漂っていそうですが、仮想通貨界隈の人たちが、みんながみんな、悲観的な見通しを持っているワケではないようだ、ということは、ぜひ、覚えておいてください。
なんでも、現在の相場状況は、ビットコインが2017年末の230万円超えに向かう以前の相場状況とよく似ているなんて分析もあるようです。もしかすると昨今の低迷も、再び史上最高値を更新する前兆なのかも…? だとすると、大底は近い…!? 詳しくは、以下の【参考記事】でどうぞ。
【参考記事】
●ビットコインはなぜ暴落? 今のチャートは2013年以降とソックリ! 大底は近いかも…
■ホリエモンも登場! ザイFX!の仮想通貨サイトオープン
そんな感じで2018年は仮想通貨にとって、いまいちぱっとしない1年ではありましたが、ザイFX!では、2018年6月に待望の仮想通貨専門サイト、「ザイFX!×ビットコイン」をオープンしました。
「ザイFX!×ビットコイン」では、11種類の仮想通貨の対円、対米ドルリアルタイムチャート&レートなどを掲載。主要な仮想通貨業者のサービス内容やお得なキャンペーン情報なども随時掲載している
【参考記事】
●「ザイFX!×ビットコイン」がオープン! 使い方や活用方法を詳しく解説しちゃいます!
2018年は、事件が起きたり相場が不調だったりと、「ザイFX!×ビットコイン」も、オープン早々、荒波渦巻く外海に投げ出された感じでしたが、明暗問わず、業者や業界のニュース、著名人・著名トレーダーへのインタビュー記事など、仮想通貨にまつわるさまざまな情報をお届けしてきました。
たとえば、業界の話題としては、2018年8月に、BITPoint(ビットポイント)がサッカー選手の本田圭佑氏をイメージキャラクターに採用したというびっくりニュースや9月に、QUOINEがICO(Initial Coin Offering ※)で調達した134億円相当を元に、プラットフォーム、Liquid by QOUINEを開発&リリースしたという、今後が楽しみなニュースなんかも紹介。
(※ICOとは、株式市場におけるIPO(Inicial Public Offering)の仮想通貨版のようなもの。企業などがトークンと呼ばれる独自の仮想通貨を発行し、それを不特定多数の投資家に取得させることで対価を得て資金調達することをいう)
【参考記事】
●ビットポイントのイメージキャラクターに本田圭佑選手が就任! イメージムービーも!
●134億円相当を集めたICO「Liquid」リリース! 世界中の注文を集めて「流動性」を確保せよ!?
また、GMOコインを擁するGMOインターネットグループやDMM Bitcoinを擁するDMM.comグループが仮想通貨のマイニング事業に参入したという話題を受けて、「今さらですが、個人でもマイニングで儲けることができるんですかね…?」という好奇心を頼りに、マイニングのしくみや最新事情を専門家に取材したりもしました。
【参考記事】
●初めてでもわかる仮想通貨のマイニング(1) マイニングをすれば誰でも簡単に儲かるの?
●初めてでもわかる仮想通貨のマイニング(2) 個人マイナーに人気のある仮想通貨って…!?
2018年末には、GMOインターネットグループが突如、2018年12月期第4四半期決算(2018年10月1日~2018年12月31日)に、マイニング事業にかかわる約355億円の特別損失を計上すると発表、マイニングマシンの開発・販売事業からの撤退を表明するなど、事業としての先行きに不安を感じる材料も出てきていますが…ひとまず、今年(2018年)、国内の大手企業がマイニング事業に参入してきたというニュースは、注目に値するもの。大丈夫なのか…?というところも含めて、今後の動向に注目したいところです。
(出所:GMOインターネットグループ「仮想通貨マイニング事業の再構築に伴う特別損失の計上に関するお知らせ」)
著名人・著名トレーダーへのインタビュー記事としては、2018年6月に『これからを稼ごう 仮想通貨と未来のお金の話』(徳間書店)を出版したホリエモンこと堀江貴文さんへの取材を実施し、読み応えバツグンのインタビュー記事を公開。
【参考記事】
●2018年の今、ホリエモンに聞いた「ビットコインなどの仮想通貨が日本で爆発的に普及しうるシナリオ」
さらに、仮想通貨の取引で億を超える財を築き上げたリアル「億り人」への取材も行い、2018年7月にはヨーロピアンさん(@sen_axis)、10月にはポインさん(@poipoikunpoi)さんへのインタビュー記事を公開しました。
2019年こそ「億り人」になりたいという人も、いや、別にそこまでは…という人もぜひ、チェックを。トレードで勝つための、何かしらのヒントに出会えるかもしれません。
【参考記事】
●約2億円の利益!? ヨーロピアン氏がBTCを200万円付近で決済できたのはなぜか?
●ヨーロピアン氏がビットコインを買う理由。早くて2019年に200万円超えへトライか?
●ハイパーニート・ポイン氏はどのように仮想通貨に出会い、億り人になったのか?
■巨額! コインチェック仮想通貨流出事件。補償額は466億円に
「ザイFX!×ビットコイン」で紹介したように、明るいニュースもあるにはありましたが、冒頭で触れたとおり、2018年の仮想通貨業界では、巨額仮想通貨流出事件のインパクトが、とにかく大きかったのは事実でしょう。ザイFX!でも、関連する話題を何度も取り上げました。
特に、2018年の年始早々、メディアを通して一般家庭のお茶の間まで騒動に巻き込んだCoincheck(コインチェック)のNEM(ネム)流出事件は衝撃的でした。被害総額は、当時の価格で驚きの580億円相当。
仮想通貨流出事件後に記者会見を行うコインチェックの和田晃一良社長(左:当時)と大塚雄介取締役(右:当時)。業界に留まらず、一般メディアでもさかんに報道され、かなり世間を騒がせた (C)Kyodo News/Getty Images
【参考記事】
●コインチェックから流出したNEMはその後、どうなった? 犯人は日本人の可能性も!?
●コインチェック事件は全額返金で一転解決!?消えた580億円分の仮想通貨NEMどうなる?
コインチェック側のリスク管理態勢などの甘さがハッカーの侵入を許し、仮想通貨流出に至ったおもな原因とされるこの事件。仮想通貨を管理するソフトウェアをめぐって、ホットウォレットとかコールドウォレットとか、マルチシグ(マルチシグネチャ)とか、聞き慣れない言葉が飛び交い、TwitterやGoogleで思わず検索した人も多かったのでは?
【参考記事】
●なぜ、仮想通貨の盗難はあとを絶たない? 仮想通貨はどうやって管理するのが安全か?
結果的にコインチェックは、被害に遭ったユーザーに対して、およそ466億円という巨額の補償をやってのけ、その後、ネット証券大手・マネックス証券を擁するマネックスグループの完全子会社になることが発表されました。
【参考記事】
●コインチェックはマネックスの子会社へ!買収金額は36億円。意外と少ない理由とは?
●コインチェックでNEMの補償に伴う日本円返金。総額466億円! 一部サービス再開も
2018年12月26日(水)現在、コインチェックはまだ、みなし仮想通貨交換業者(みなし業者)ではあるものの、事件以降、停止していた仮想通貨の購入や送付などのサービスを順次再開。マネックスグループの一員として再スタートを切っています。
正式に仮想通貨交換業者として登録される日は近い…との報道もありますので、近い将来、登録業者として改めてアクセルを踏み込むことになるのかも。もともと人気業者の一角ですし、2019年、コインチェックは要チェックの1社になりそうです。
■テックビューロは70億円規模の流出事件で廃業
2018年の仮想通貨流出事件といえば、もう1つ。9月に起きた、テックビューロが運営するZaifのMONA(モナコイン)、BCH(ビットコインキャッシュ)流出事件も忘れてはいけません。
【参考記事】
●流出事件のZaifはフィスコ仮想通貨取引所に吸収! テックビューロは廃業へ。70億円分の補償は?
●「またか!?」 Zaifで67億円相当の仮想通貨消失! フィスコ、50億円の金融支援で顧客損失補填へ!?
日本円にしておよそ70億円規模の事件となりましたが、こちらは事件発覚と同時に、JASDAQ上場企業であるフィスコのグループ会社、フィスコデジタルアセットグループとの間で、その子会社であるフィスコ仮想通貨取引所を通じた金融支援などに関する基本契約が結ばれるという急展開となりました。
助っ人の登場があまりにも早く、なにか裏があるのかしら? と下世話な妄想をしたくなる感じはありましたが、特に怪しいところがあるワケではないようで…。
その後、両者で正式契約が結ばれて事業譲渡が行われた結果、Zaifの運営はテックビューロからフィスコ仮想通貨取引所へ。また、Zaifで取引していたユーザーとテックビューロとの契約や預託した仮想通貨の返還を求める権利などもフィスコ仮想通貨取引所へと引き継がれました。
要は、テックビューロが運営していたZaifの事業について、流出事件で失った仮想通貨の補填対応も含めて、ユーザーごとまるっとフィスコ仮想通貨取引所が譲り受けたというワケです。
これを受けて、テックビューロは、あっさりと廃業を決定。以前は、売れっ子有名女優を使ったテレビCMを放映するなど、派手にZaifのプロモーションを行っていたテックビューロでしたが、なんともあっけない幕切れでした。
ちなみに、Zaifのユーザーは、事業譲渡に関して同意手続きを行うと、引き続き、承継先であるフィスコ仮想通貨取引所で取引することができるそうです。「手続きは、2018年12月31日(月)までに済ませてください」とのことですので、対象の方はzaifのウェブサイトなどで詳細の確認を。
■金融庁による行政処分が頻発。監視強化へ
コインチェック事件もZaif事件も、最終的にユーザーの元へ何も返ってこないという最悪の事態は回避されたものの、事件が仮想通貨業界に与えた影響は大きいものがありました。
コインチェック事件があった2018年1月以降、金融庁は全みなし業者・登録業者に対して不正アクセスへの注意喚起と緊急自己点検の実施を要請。点検結果を受けて、複数の業者へ立ち入り検査を実施し、問題が認められた場合は、次々と業務改善命令や業務停止命令などの行政処分を出していったのです。一気に、金融庁による監視強化が進んだ印象でした。
【参考記事】
●総資産が553%も拡大した仮想通貨業界に課題。金融庁の登録審査は、より厳格化の流れか
●金融庁がみなし業者含む7社に行政処分。コインチェックの月間取引高は約4兆円!?
なかでも2018年6月、業界大手のbitFlyer(ビットフライヤー)やbitbank(ビットバンク)など一挙6社に業務改善命令が出された時には、衝撃が走りました。
いずれも改善計画を提出し、指摘箇所の改善に取り組んでいるようですが、ビットフライヤーについては、問題の改善に注力するため…ということで、業務改善命令を受けた2018年6月以降、12月26日(水)現在に至るまで、自主的に新規口座開設の受付けを休止したままになっています。
【参考記事】
●業界激震! bitFlyerなど6社に業務改善命令。ザイFX!が発見した6社の共通点とは?
ちなみに、2018年9月に流出事件を起こしたZaifの運営元・テックビューロ(当時)には、3月と6月の2度に渡って業務改善命令が出されており、システムリスク管理態勢や利用者財産などについての内部管理態勢、経営管理態勢といった複数の事柄について、不十分との指摘がなされていました。
テックビューロとしても、改善計画書を提出するなどして信頼回復に努めることを表明していましたが、残念ながら、最終的にあのような事件を起こしてしまったワケです…。
結局、現時点では、どんなに対策を講じても、外部からのハッキングなどによる仮想通貨不正流出の可能性はゼロにはならないものと思われます。100%安全でない以上、取引所で取引するなら、誰しも仮想通貨流出事件に巻き込まれる可能性がある、ということは頭に入れておく必要があるでしょう。
もちろん、取引所の管理態勢いかんで、そうしたリスクを抑える対策を講じることはできると思いますので、取引所を運営する各業者には可能な限りの対策をお願いしたいところ。2018年に頻発した行政処分とその改善対策を経て、かなり安全性の底上げは図られたものと信じたいです。
【参考記事】
●なぜ、仮想通貨の盗難はあとを絶たない? 仮想通貨はどうやって管理するのが安全か?
■自主規制団体の登場で業界の健全化へ、一歩前進
上述のとおり、大きな仮想通貨流出事件を2つも経験した2018年でしたが、こうした事件が起きた背景には、2017年春に仮想通貨についての規定が盛り込まれた改正資金決済法が施行されたものの、実務に即した具体的な統一ルールは細かく定められていなかったという問題が潜んでいたのかもしれません。
乱暴に言ってしまえば、細かなところは各業者の裁量任せという状況のなかで、2017年のウソのような上昇相場を経て急速にサービス規模が拡大した結果、業務効率や利益が優先され、本来、もっとも重視されるべきリスク管理や内部管理体制の整備がおろそかになる業者も、一部に出てきてしまったのではないかと思うワケです。
しかし、こうした状況も今後、大きく変わっていくだろうと希望を抱かせる業界団体が、今年、2018年に誕生しました。それは、仮想通貨業界の自主規制を主導していくべく設立された団体、日本仮想通交換業協会(JVCEA)です。
2017年にあれだけ仮想通貨がフィーバーしたにも関わらず、これまで複数の業界団体が主導権を争うような格好で、まとまり切らずにいましたが、ようやく各勢力が足並みを揃え、同協会の設立に漕ぎつけたのが2018年4月のこと。
それぞれ、別の団体を率いていたマネーパートナーズの奥山氏とビットフライヤーの加納氏が手を組み、それを財界のドン・SBIホールディングスの北尾氏や仮想通貨大手、ビットバンクの廣末氏などが固めるという布陣が整いました。
【参考記事】
●マネパとビットフライヤーが手を組んだ! 理事には財界のドンSBI北尾氏が自ら降臨!?
こうして誕生した仮想通貨交換業協会は、2018年10月、正式に法令上の認定事業者協会(いわゆる自主規制機関・団体)と認められ、やっとこさ本格始動。ウェブサイトでは、自主規制ルールの内容が「規則・ガイドライン」という形で公開されました。
仮想通貨交換業協会には、全登録業者16社(2018年12月現在)が会員として登録されており、協会は、各仮想通貨交換業者に向けて法令や協会ガイドラインの順守を働きかけ、場合によっては指導や勧告、処分を行うことが可能です。行政機関とは異なる立場ではありますが、一定の実効力を伴った運営が行われることになります。
【参考記事】
●金融庁が仮想通貨の自主規制団体を認定。証拠金取引のレバレッジは4倍へ引下げ方針
仮想通貨交換業協会には、業界を健全な方向へ引っ張っていけるように、がんばってもらいたいところ。
黎明期ならではの混乱はまだあるのかもしれませんが、自主規制機関ができたことで、今後、仮想通貨業界全体としての安全性や信頼性は、徐々に高まっていくのではないでしょうか? ぜひ、そうなってもらいたい。期待しましょう。
仮想通貨の暗黒時代とも言えそうな2018年でしたが、闇が深いほど夜明けは近いとも言います。当記事でお伝えしたとおり、相場については大底が近いかも(?)しれないし、業界の環境的にも仮想通貨交換業協会の誕生で、状況は大きく変わろうとしている(?)ように見えます。
まぁ、実際のところ、何がどうなるかはフタを開けてみないことにはわかりませんが、2019年こそは、「ザイFX!×ビットコイン」でも、できるだけ明るい話題をたくさんお届けしたいものです。
みなさまにとっても、2019年が明るく、良い年になりますように。どうぞ明年も、ザイFX!ともども「ザイFX!×ビットコイン」を、よろしくお願いいたします。
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