■2020年春に改正資金決済法と改正金融商品取引法施行へ
こんな事件が後を絶たないところを見ると、まだまだ黎明期…という印象が強い仮想通貨業界ですが、法規制の面で新たな動きがありました。
2019年5月、仮想通貨業者や取引所などに対する規制強化が盛り込まれた改正資金決済法と改正金融商品取引法が成立。早ければ、2020年4月に施行される見通しです。

(出所:金融庁「国会提出法案(第198回)」関係資料)
改正に伴い、「仮想通貨」の法令上の呼び方は「暗号資産」に改められましたが、ここでは引き続き「仮想通貨」という呼称を使っていきたいと思いますので、ご承知おきください。
かいつまんでお伝えすると、今回の改正では、まず、仮想通貨の不正流出リスクへの対策として、仮想通貨業者に対し、業務を円滑に進める上で必要となる分を除き、顧客から預かった仮想通貨を信頼性の高い方法(コールドウォレットなど)で保管すること、さらに、ホットウォレットで管理する顧客の仮想通貨については、それと同種・同量の仮想通貨を保持することが、資金決済法上で義務付けられました。
【参考記事】
●コインチェックの正式登録を金融庁が発表。次は楽天系、LINE系の仮想通貨交換業者も!?
ここ1、2年の内に起こった国内の不正流出事件を見ると、いずれも何らかの形で流出分の補償は行われていましたが、その方法が現金での補償なのか?仮想通貨での補償なのか?対応は、業者によって異なっていました。
【参考記事】
●流出事件のZaifはフィスコ仮想通貨取引所に吸収!テックビューロは廃業へ。70億円分の補償は?
●コインチェックでNEMの補償に伴う日本円返金。総額466億円! 一部サービス再開も
個人的には、流出した仮想通貨は相応の現金ではなく、仮想通貨で返すのが自然では?と感じていましたが、今回の改正内容を見ると、やはり、仮想通貨は仮想通貨で返還すべし、というのが大原則となるようです。
また、今回の改正では、金融商品取引法上の「金融商品」の定義に仮想通貨が追加され、これまで同法の規制対象外だった仮想通貨の証拠金取引(レバレッジ取引などとも言う)についても、FX(外国為替証拠金取引)と同様に、金融商品取引法上の規制が適用されることになりました。
さらに、金融商品取引法には、仮想通貨取引に関わる不公正な行為、たとえば不当な価格操作などを禁止する項目も盛り込まれます。
ここではこれ以上触れませんが、規制のあり方が曖昧だったものが法令上できちんと整理され、明文化されることは、ユーザーが安心して取引をする上でも大事なことでしょう。
仮想通貨をめぐる前向きなニュースの1つとして、とらえて良さそうな動きです。
■レバレッジ規制については、まだ議論の余地が?
ただし、法改正に関連して、仮想通貨の証拠金取引における証拠金率(レバレッジ)については、内閣府令や関連法令によってその数字や算定法を定めるのではなく、該当する自主規制団体の規制・規則に委ねるべきではないか?とする議論などが、まだ残っているようです(参考:日本仮想通貨ビジネス協会「デリバティブ規制に関する提言書」 ※)。
(※「日本仮想通貨ビジネス協会」とは、仮想通貨関連ビジネスに従事する事業者や参入を検討している事業者同士が交流、意見交換、勉強会などを行うことで知見を深め、仮想通貨業界全体の健全な発展を目指すことを目的とした団体。自主規制団体ではない。ちなみに、ザイFX!も準会員として同協会に参加している)
現状、仮想通貨の自主規制団体であるJCVEA(日本仮想通貨交換業協会)は、「証拠金取引に関する規則・ガイドライン」により、当面の間、仮想通貨の証拠金取引における証拠金率は25%以上(レバレッジ4倍以下)とする、と定めており、ざっと見たところ国内の仮想通貨交換業者は、現状、どこもレバレッジ4倍以下で証拠金取引サービスを提供しています。

【参考記事】
●金融庁が仮想通貨の自主規制団体を認定。証拠金取引のレバレッジは4倍へ引下げ方針
以前は、もっとハイレバレッジで証拠金取引ができる業者もありましたが、協会の自主規制に従い、各業者とも順次レバレッジの引き下げを行ったのです。
ユーザーとしても、レバレッジの倍率が今後どうなっていくのか?というのは大いに気になるところ。改正法の施行までに、何らかの動きがあるかもしれません。引き続き、注目しておきたいと思います。
猫も杓子もビットコイン、ビットコインと騒いでいた時期に比べると、世間の仮想通貨熱はずいぶん冷めてきたように感じますが、お伝えしたとおり、2019年は大手企業の相次ぐ参入や法整備など前向きな出来事も多くありましたし、ビットコイン相場も回復の兆し(?)を見せてくれました。
仮想通貨市場が成熟期を迎えるのは、まだこれから…期待を寄せつつ、FXとともに仮想通貨の動向にも注目しましょう!
2020年も、「ザイFX!」ならびに「ザイFX!×ビットコイン」をどうぞよろしくお願いいたします。
【参考記事】
●ザイFX!で2019年を振り返ろう!(1)大暴落後は動かない、動かない、動かない
●ザイFX!で2019年を振り返ろう!(2)米ドル/円0.1銭原則固定のFX会社も出現!
【参考コンテンツ】
●ビットコイン・仮想通貨の取引所/販売所を比較。取引コストが安いのはどこ?
●「ビットコイン・仮想通貨のFX」ができる取引所を比較。上昇も下落も収益チャンスに
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)