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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

米ドルは戻り売り! 善意に満ちたパウエル
講演の内容は、トランプと同じ金融緩和

2020年09月02日(水)15:57公開 (2020年09月02日(水)15:57更新)
志摩力男

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■経済学って、なんて冷たい学問なんだ…

 僕は学生時代、経済学部でしたが、「経済学」ってどうしても好きになれないところがありました。

 マクロ経済学の基礎を学ぶとき、必ず出てくる「フィリップスカーブ(フィリップス曲線)」。ここで引っかかりました。

フィリップスカーブとは、インフレ率と失業率の関係性を表すカーブです。失業率が高くなるとインフレ率が下がり、失業率が低くなるとインフレ率が上昇します。

 「まあ、そうだろうな」とは、思います。しかし、雇用が増えることは良いことのはずです。

 なのに、このフィリップスカーブを見ていると、あたかも雇用が増えることが悪いことのように感じさせられるのです。

 「経済学って、なんて冷たい学問なんだ…」と、学生時代、よく考えさせられました。

■パウエルFRB議長は「インフレより雇用が大事」と政策転換

 今年(2020年)のジャクソンホール会議は、オンラインでの開催となりました。

 ここは、政策決定の場ではありませんが、過去に何度か重要な政策の示唆や考え方が示され、今年のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演も重要なものとなりました。

 “New Economic Challenges and the Fed's Monetary Policy Review”と題された講演で、議長は「インフレより雇用が大事」と大きく政策の舵を切ったのでした。

パウエルFRB議長写真

ジャクソンホール会議での講演で、パウエルFRB議長は「インフレより雇用が大事」と大きく政策の舵を切ったと志摩氏は指摘 (C)Bloomberg/Getty Images News

 コロナ騒動が起こる前、米国は好景気でした。失業率は過去にないほど低下しましたが、それでもインフレ率は上昇しませんでした。フィリップスカーブに変化が起こっていたのです。

過去の政策当局者であれば、「そのうちインフレが起こる」から予防的に引き締めて行くのが通例でした。

しかし、雇用増はすばらしい変化を社会にもたらしたと議長は言います

 特に、黒人やヒスパニックの失業率が低下し、白人の失業率に近づいたこと、労働参加率が上昇したことを称賛。これまで仕事がなかった人たち、光が当たらなかった人たちも仕事に就けるようになったと言いました。「それは、彼らの家族、コミュニティに利益をもたらし、我々社会の生産能力を拡大する」と――。

 つまり、低金利で好景気を維持することで「社会変革まで起こせる」と言っているのですが、ここまで来ると一種の革命です。

 「パウエル議長って、なんていい人なんだろう」と、学生時代の僕だったら思ったことでしょう。それほど、パウエル議長の講演は、「善意」に満ちていました

 そして実現の手段として、平均インフレ率という概念を提唱し、インフレ率が多少2%を超えても良いという新しい「長期目標と金融政策ストラテジー」を打ち出しました。

【参考記事】
米ドル/円、長期的には104円のサポートを割り込む可能性。戻り売りが良さそう!(9月1日、バカラ村)
豪ドル/米ドルを押し目買い! 米ドル安は続く。「菅首相」誕生なら市場の反応は?(8月31日、西原宏一&大橋ひろこ)
コロナバブルに乗れるかどうかで、人生が変わる! 日本が受ける米緩和の恩恵とは?(8月28日、陳満咲杜)

■戻りを待って米ドル売りというマーケットが続きそう

 でも、中央銀行ができることは、金融政策だけです。

 パウエル議長は、何かいろいろなものを背負い込み過ぎてないでしょうか。

パウエル議長の言葉は善意に満ちていますが、言っている内容は、金融緩和しろというトランプ大統領と同じです。

【参考記事】
株価上昇=経済政策が正しいと言えるのか? 迫る大統領選、人種問題がトランプの逆風に!(6月10日、志摩力男)
FRBはトランプ政権の「無限の財布」になった。市場正常化とともに米ドル下落が始まる(4月15日、志摩力男)
下品なツイートを浴びせるトランプ大統領が作り出す米国株バブルはいつ崩れる?(2月12日、志摩力男)

 今はコロナ禍で大変ですが、株式市場は大にぎわいです。ちょっと警戒すべき水準なのかもしれませんが、パウエル議長は”Go Ahead”と言いました。

議長的には、それが雇用を拡大し、社会正義につながるのでしょうが、貧富の差拡大にもつながっているようにも見えます

 ”The road to hell is paved with good intentions”(地獄への道は善意で敷き詰められている)。こんな言葉もあります。

インフレ容認、緩和政策の継続を約束したのですから、米ドルは戻り売りとなるのでしょう。

もうすでに、ある程度、米ドルは下落しているので調整はあると思いますが、戻りを待って米ドル売りというマーケットは続くのでしょう。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:TradingView


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