■大型M&Aによる巨額の豪ドル買い観測も影響は限定?
ただ、今回の下落局面で市場参加者がとまどいをみせたのがその下落スピード。
上海株が30%以上もの急落を演じている大相場にも関わらず、豪ドルの下落はこれまでと違って至極緩慢。その理由は、今週(8月17日~)に入って、カナダの会社がオーストラリアの鉄道会社を買収するといった報道が影響していたと判明。
加ブルックフィールド、豪アシアノを88億ドルで買収
カナダのブルックフィールド・インフラストラクチャーは、オーストラリアの鉄道貨物会社アシアノ AIO.AX を120億豪ドル(88億4000万米ドル)相当で買収すると発表した。国外からの豪企業買収としては過去7番目の規模となる。
買収額は1株当たり9.15豪ドル。直近の株価である8.11豪ドルに13%上乗せした水準。アシアノは17日、株式の売買停止を要請した。
アシアノは18日に業績発表を予定しているが、トムソン・ロイター・スターマインのアナリスト予想によると、6月30日までの1年間の純利益は3億9200万豪ドルと、トール・ホールディングスから分離・独立(スピンオフ)した2007年以降で最高益となる見通し。トール・ホールディングスをめぐっては今年2月、日本郵便 IPO-JAPP.T が65億豪ドル(51億米ドル)で買収提案し、経営統合することで合意している。
ブルックフィールドは6月26日にアシアノの買収を打診していた。ブルックフィールドは西オーストラリア州に5500キロメートルの鉄道網を有している。
出所:ロイター
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
このM&Aによる金額が120億豪ドルもあるため、いったんマーケットは神経質になります。
しかし、こうしたニュースが公になる前に、巨額の豪ドルの手当てが始まっていると想定され、これまで豪ドル/米ドルが不思議なほど耐性をみせていた要因の1つとしてとらえられています。
もっとも、オーストラリアの銀行の友人によれば、株式交換なども含めて、結果的には48億豪ドル程度の豪ドル買いのみが行なわれるのではないかとのこと。
ともあれ、このM&A報道による影響が限定的であると想定されるため、中国発の報道を横目に豪ドルの下落が再開するのではないかと考えています。
(出所:米国FXCM)
■「AxJ」通貨の下落も豪ドル売りの要因に
豪ドル/米ドルをフィボナッチで見てみると、2015年6月18日(木)の高値である0.7849ドルと、8月12日(水)の安値である0.7216ドルの下落幅の38.2%戻しが0.7469ドル。
前述のM&A絡みによる巨額の豪ドル買いにも関わらず、38.2%戻しの0.7469ドルを越えられず、豪ドル/米ドルはじり安の展開。
(出所:米国FXCM)
米系の大手金融機関・モルガンスタンレーは、今週(8月17日~)、「AxJ」(Asia Excluding Japan、日本を除くアジア諸国)通貨の売りを推奨するレポートを顧客向けに配信している模様。
【参考記事】
●中国人民元切り下げで売り推奨の通貨は? さらに利下げ濃厚のNZドルは売り戦略で!(8月17日、西原宏一&松崎美子)
多くのアジア通貨の下落も、豪ドルの下落を誘引する要素の1つ。
(出所:CQG)
(出所:CQG)
上海株の急落が、「Troubled 10」や「AxJ」通貨の下落を誘引し、豪ドルも再び下落再開。
直近の安値である、8月12日(水)につけた、0.7216ドルを割り込むと、豪ドル/米ドルの下落余地が拡大します。
上海株と、商品価格が軟調に推移する相場展開の中、下落を再開した豪ドルの動向に注目です。
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