■EU離脱派を勝利に導いた2人のキーマン
今回の国民投票でEU離脱派を勝利に導いた人物が2人いる。
そのひとりが、EU離脱を訴え続け、国民投票の際、UKIP党首だったファラージュ氏。
EU離脱を訴え続け、国民投票の際、UKIP党首だったファラージュ氏 (C)Leon Neal/Getty Images
ファラージュ氏は、英国がEUに支払ってきた拠出金を離脱後に国民医療制度の充実に充てる公約を掲げて、EU離脱派を勝利に導いた。
でもこれには後日談がある。ファラージュ氏はEU離脱が決定したあと、「EUへの拠出金を財源にできるかどうかは保障できない」とし、公約を撤回したのだ。
この公約はEU離脱派を勝利させる目玉でもあっただけに、まさかのちゃぶ台返しに批判が強まった。
その後、ファラージュ氏は「目的は達成された」としてUKIP党首を辞任。EU離脱派を勝利に導いた人物でありながら、なんとも決まりの悪い引き際となった。なお現在、ファラージュ氏はUKIP党首代行の立場にある。
そして、もうひとり、今回のEU離脱決定に大きく影響を与えた人物として忘れてならないのが、前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏。
今回のEU離脱決定に大きく影響を与えた人物として忘れてならないのが、前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏 (C)Justin Sullivan/Getty Images
ジョンソン氏は次期首相候補との呼び声も高かった政治家で、保守党に所属しながら、真っ先にEU離脱に賛成を表明したことで、保守党内でEU離脱派のリーダー的存在となっていた。
しかし、英国のEU離脱決定後、ジョンソン氏は保守党の党首選への立候補を目指したが、結局、不出馬を表明。
現在は、キャメロン首相のあとを継いだメイ首相から外務大臣に指名され、その任についているが、次期首相候補筆頭とも言われていただけに、まさかの党首選不出馬を市場はサプライズと受け止めた。
■不可解な「事件」で英ポンド暴落騒ぎが起きていた
Brexitが英ポンドにとって今年(2016年)のハイライトとなる出来事だったのは間違いない。
でも、以下の日足チャートをご覧いただきたい。英ポンドが対米ドルや対円で今年(2016年)の安値をつけたのは、Brexitが起きた6月ではなく、10月に入ってからなのだ…。
(出所:Bloomberg)
2016年10月7日(金)、日本時間8時すぎ、英ポンドが大暴落するというショッキングな「事件」が発生した。
以下のチャートで、その時の英ポンドの暴落っぷりがご覧いただけるだろう。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
このようにかなりの勢いで暴落した英ポンドだが、6月のBrexitのように明確な材料があったわけではない。何の前触れもなく、突然、大暴落したのだ。
当時、「ファット・フィンガー」(誤発注)という説や、シティバンクのトレーダーが取引量の薄い時間にパニックになって巨額の売りを仕掛けた説など、さまざまな説が流れていたが、結局、真相は闇の中…。
この「英ポンド暴落事件」については、以下の記事でその経過などを詳しく解説しているので、こちらをぜひご覧いただきたい。
【参考記事】
●ポンド殺人事件の謎を追う! 暴落の真相は? スプレッドが狭いままだったFX会社発見!
ここまで2016年の相場の中でBrexit(英国のEU離脱)を中心に振り返ってきた。
メイ首相は2017年第1四半期中にも、EUからの正式な離脱交渉を開始するため、EU基本条約(リスボン条約)第50条を発動させるという方針を明らかにしている。
ただ、それはスタート地点にすぎない。実際に英国がEUを離脱するまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。そして、EU離脱への動きが進展するにつれて、2017年相場でも英ポンドが大きく動くことになってくるかもしれない。
(「ザイFX!で2016年を振り返ろう!(2)トランプ氏当選でまさかのリスクオン到来!」へつづく)
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