■FOMC後のドル安進行継続。ドル/円は110円割れ目前へ
みなさん、こんにちは。
前回、前々回と当コラムでご紹介させていただいたように、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の米ドル安は今週(3月27日~)も進行。
【参考記事】
●FOMC後の米ドル下落は想定どおり。ドル/円は113円台へ下落。上値は重いか…(3月16日、西原宏一)
●米利上げ後の米ドル安継続、米ドル/円は110円割れへ。下値模索はなぜまだ続く?(3月23日、西原宏一)
米ドル/円は一時、110.11円と110円割れ目前まで急落しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
しかし、110円台前半は本邦機関投資家の期末を控えての米ドル買い注文が厚く、下げ止まり。
本稿執筆時点での米ドル/円は111円台を回復し、111.25円で推移しています。
■値幅的、日柄的にドル/円はいったん調整の保ち合い入り
以下は米ドル/円の日足チャートです。

(出所:Bloomberg)
トランプラリーの起点となる、2016年11月9日(水)安値が101.20円、そして、同年12月15日(木)高値が118.66円。その50%戻しが109.93円となります。
今週(3月27日~)の米ドル/円の安値が110.11円。
本日は3月30日(木)ということで、期末が目前に迫っています。
結果として、3月15日(水)のFOMCでの利上げをきっかけとした米ドル/円の下落トレンドですが、
(1)値幅的には50%戻し(=109.93円、実際の相場は110.11円)
(2)日柄的には本邦の期末という節目
というように、値幅的にも、日柄的にもいったん調整の保ち合いに入ったといえます。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
■トランプ米大統領の求心力低下で、市場のセンチメント悪化
ただ、米ドル/円が本格的に上昇トレンドに回帰するのはまだ時間がかかりそうです。
それは、米国でのヘルスケア法案に関する混乱。
【参考記事】
●FOMCきっかけの米ドル安はまだ続く…。市場は英ポンド安期待も、もう少し買い継続(3月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
3月中旬ごろから、ヘルスケア法案の採決が遅れる可能性をマーケットが懸念し始め、NYダウは反落へ。

(出所:Bloomberg)
その懸念は3月24日(金)に現実となり、ヘルスケア法案の採決は中止されました。
米下院共和党は24日、トランプ大統領の指示を受けて医療保険制度改革法(オバマケア)代替法案の採決を中止した。大統領は前日、議席を失いたくないなら法案を支持せよと共和党議員に迫っていたが、最新の法案に反対する共和党議員の数は減るどころか増えていた。
共和党首脳部の側近によると、ライアン下院議長は採決予定時刻の間際にトランプ大統領から電話で要請を受け、採決中止とした。
出所:Bloomberg
トランポノミクスに対するリスクは、トランプ政権及び共和党の目指す経済政策の実行が遅れてしまうことといわれていましたが、それが現実のものとなります。
トランプ大統領が「次は税制改革だ!」とコメントしたように、焦点が税制改革に移行することを評価しているマーケット参加者もいますが、トランプ大統領の求心力低下は、マーケットのセンチメントを悪化させています。

ヘルスケア法案の採決中止を受けて「次は税制改革だ!」とトランプ大統領はコメント。これを評価する市場関係者もいるが… (C)Chip Somodevilla/Getty images
NYダウは3月1日(水)の2万1169ドルを高値に調整局面入り。
呼応して、米国債利回りも調整で低下気味となっています。

(出所:Bloomberg)
そして、米ドル/円もトランポノミクス(※)の失速とともに、調整局面入りとなっています。
(※編集部注:「トランポノミクス」とは、ドナルド・トランプ氏とエコノミクス(経済学)を合わせた造語で、トランプ氏が掲げる経済政策のこと)
■新年度入りによる本邦機関投資家の動向に注目
前述のように、米ドル/円はトランプラリーの50%戻し水準まで急落した後、保ち合い相場入り。
この後の相場は、来週から4月入りというシーズナルファクターに大きく左右されます。
4月という月は、本邦の新年度入りということもあって、3月までのトレンドが4月入りして大きく変貌する傾向があるためです。
たとえば、昨年(2016年)の4月。
昨年(2016年)4月は本邦勢の新規投資も期待され、米ドル/円、そして日本株とも反発することが予測されていました。
ところが、昨年(2016年)4月の米ドル/円は大きく下落。

(出所:Bloomberg)
その要因は中東勢でした。
2016年前半は原油が急落し、一部では原油本位制ともいわれ、原油の動向が米ドル/円の動向に大きな影響を与えていました。
【参考記事】
●原油上昇と金反落が米ドル/円をサポート。105円突破すれば109円台へ上昇濃厚!(2016年10月13日、西原宏一)
●なぜ、日本株と米ドル/円はじりじり上昇? カギ握る中東マネー。ドル/円は109円台も(2016年10月27日、西原宏一)
昨年(2016年)4月は中東勢が原油の急落に耐えられず、キャッシュが必要となった彼らは日本株を大きく売り越します。
同時に米ドル/円の売りも持ち込み、米ドル/円は下落しました。
加えて、上海合意のウワサもあり、昨年(2016年)4月の米ドル/円は112円から106円まで大きく値を崩しました。
【参考記事】
●安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に!(2016年4月6日、西原宏一)
■本邦勢の米ドル買いなければ、さらなる米ドル安の公算も
今年(2017年)も4月に入って本邦勢から新規投資による米ドル買いが断続的にマーケットに投下されない限り、トランポノミクスの失速がさらなる米ドル安を誘引する公算が高まっています。
仮に、米ドル/円がトランプラリーの50%戻しを割り込むと、米ドル安に加速がかかるので要注意です。

(出所:Bloomberg)
トランプ政権及び共和党の目指す経済政策の実行の遅れがトランポノミクスの失速となり、上値が重くなった米ドル/円の動向に注目です。
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