経験のあるFXトレーダーにはいまさらながらの話ですが、FXのトレードは「新規の買い」か「新規の売り」でポジションを建てて取引をスタートし、そのポジションを反対売買して決済することで取引を終えます。
その「新規の買い」や「新規の売り」、あるいは建てたポジションの反対売買を行う注文方法は、売買したいタイミングや価格に応じて複数あります。
FX会社によって注文方法の名称や機能は違うことがありますが、一般的に以下の6つの注文方法が挙げられます。
1.成行注文
2.指値注文
3.逆指値注文
4.OCO注文
5.IFD注文
6.IFO注文
【参考記事】
●FXの注文の種類と注文の方法【前編】 成行注文・指値注文・逆指値注文
●FXの注文の種類と注文の方法【後編】 OCO注文・IFD注文・IFO注文
FX取引の各種注文方法については上記の【参考記事】で解説されていますが、今回はその中の「成行注文」を深掘りしてみたいと思います。
というのも、先ほど触れたとおり、FX取引の注文方法の名称や機能はFX会社によって違いがあり、特に「成行注文」については各社バラバラということがあるので、深掘りする価値があるからです。
文字どおり、「成り行き任せ」の注文方法
「成行注文」とは、その場で出して、すぐ約定させようとする注文方法のこと。もともと、株式取引では昔から使われていた注文方法で、この言葉は、FXよりも株式の世界でよりなじみが深いように思えます。株式の注文方法に成行注文がない証券会社はないはずですが、「成行注文」という名称の注文機能を持たないFX会社はあるのです。
「成行注文」は基本的には現在値近辺での約定を期待して出す注文方法ですが、いつもいつも現在値近辺で約定するかどうかはわかりません。株価が小動きの時は発注時の株価付近で注文が約定しますが、株価が大きく動いているときは発注時の株価から大きく乖離した株価で注文が約定することもあるのです。
株式取引における「成行注文」はそのような場合でも、本当にいくらでもいいから買ったり売ったりしてください、という注文方法になります。文字どおりの「成り行き任せ」というわけです。
株の「成行注文」にはスリッページ発生の可能性が常にある
発注時の価格と約定時の価格が乖離すること、またはその乖離幅のことを「スリッページ」と言いますが、トレーダーが発注したタイミングと注文を受ける側(証券取引所やFX会社など)のサーバーに注文が届くタイミングに差があることから、通常、スリッページはある程度、相場が動いているときには必然的に発生するものです。
つまり、株の「成行注文」はスリッページが発生する可能性が常にあるわけです。
また、株の「成行注文」は証券取引所側で定めた注文方法なので、その名称や機能が証券会社によって違うということもありません。その一方、店頭FXの世界では各FX会社が独自に注文方法を決めているため、「成行注文」の名称や機能もバラバラになっています。
FX会社によってはトレーダーが許容できるスリッページの幅をあらかじめ設定できる機能があるのです。「成行注文」を発注して設定幅以上のスリッページが発生したら、その注文は約定されず、キャンセルされるというわけです。
【参考記事】
●FXの注文の種類と注文の方法【前編】成行注文・指値注文・逆指値注文
●あなたは経験したことがありますか? 怪しいスリッページやレートずらしを…
けれど、「成行注文」がキャンセルされる可能性がある注文方法というのは、本当にいくらでもいいから買ったり売ったりしてくださいという、株式取引の「成行注文」とは実態が明らかに違いますよね。
そこで今回は、FX取引における“成行系の注文”(=その場で出してすぐ約定させようとする注文)のうち、本当にいくらでもいいから買ったり売ったりする注文を「純粋ないわゆる成行注文」、スリッページ設定機能がある注文を「成行的な注文」と分類して、整理してみたいと思います。
「純粋ないわゆる成行注文」と「成行的な注文」を間違えると…
ここでFX取引の例を2つ見てみましょう。
あるトレーダーが発注時の価格近辺ならいくらでもいいからすぐに買いポジションを持ちたいと思い、あるFX口座にて新規の買いを「成行注文」という名称の注文機能で発注したとします。
ところが、そのFX口座の「成行注文」は、実はスリッページの許容幅を設定できる「成行的な注文」であり、相場が動いて設定幅以上のスリッページが発生したため、注文がキャンセルされてしまいました。
発注時の価格近辺ならいくらでもいいから買いたくて、「純粋ないわゆる成行注文」を発注したつもりだったのに、実際には注文がキャンセルされてしまったというわけです。
また、この取引例とは逆のパターンもあり得ます。
発注時の価格近辺で買いポジションは持ちたいけれど、大きくスリッページするなら買いポジションを持ちたくないと思ったとしましょう。先ほどの例で、大きくスリッページされれば注文がキャンセルされるという経験をしていたため、「成行注文」を出しておけば問題ないと思い、今回も新規の買いを「成行注文」という名称の注文機能で発注したとします。
ところが、FX口座の発注機能なんてどのFX口座でも同じだろうと思い、今回は前回とは別のFX口座で「成行注文」を出していたのでした。そうしたら、それは文字どおりの「純粋ないわゆる成行注文」であり、そのため、大きくスリッページして注文が約定してしまったのです。
この2つの例のような意図しない取引をしないためにも、自分が口座開設しているFX会社のその場で出してすぐ約定させようとする注文が「純粋ないわゆる成行注文」なのか、「成行的な注文」なのか、しっかり把握しておく必要があると言えるでしょう。
「ストリーミング注文」は「成行的な注文」の典型的な名称
それでは、主要FX会社のその場で出してすぐ約定させようとする注文を「純粋ないわゆる成行注文」と「成行的な注文」に分類してみましょう。以下はそれをまとめた表になります。
FX会社 「口座」 取引ツール |
「純粋ないわゆる 成行注文」 (スリッページ 設定なし) |
「成行的な注文」 (スリッページ 設定あり) |
GMOクリック証券 「FXネオ」 |
− | 成行注文 スピード注文 |
ブラウザ取引画面 | ||
DMM.com証券 「DMM FX」 |
− | ストリーミング注文 |
DMMFX PLUS | ||
YJFX! 「外貨ex」 |
− | リアルタイム注文 ワンタッチ注文 |
Cymo NEXT | ||
ヒロセ通商 「LION FX」 |
成行注文 | ストリーミング注文 クイック注文 |
LION FX C2 | ||
外為どっとコム 「外貨ネクストネオ」 |
成行注文 | マーケット注文 スピード注文2 スピード注文 |
リッチアプリ版 | ||
SBI FXトレード | 成行注文 | 2WAY注文 |
リッチクライアント | ||
マネーパートナーズ 「パートナーズ FX nano」 |
− | ストリーミング注文 |
クイック発注ボード | ||
マネーパートナーズ 「パートナーズ FX」 |
ストリーミング | − |
クイック発注ボード | ||
トレイダーズ証券 「みんなのFX」 |
− | 成行注文 |
FX トレーダー | ||
トレイダーズ証券 「LIGHT FX」 |
− | 成行注文 |
アドバンスドトレーダー | ||
セントラル短資FX 「FXダイレクトプラス」 |
− | 成行注文 スピード注文 |
Web取引システム | ||
サクソバンク証券 「スタンダードコース」 |
− | 成行注文 |
SaxoTraderGo | ||
IG証券 「標準」 |
マーケット注文 成行注文 |
スリップ幅 指定注文 |
Webブラウザ版 取引システム |
||
FXトレード・フィナンシャル 「FXTF MT4 ・1000通貨コース」 |
成行注文 | − |
FXTF MT4 | ||
FXトレード・フィナンシャル 「FXTF MT4 ・1万通貨コース」 |
− | ストリーミング注文 |
FXTF MT4 | ||
JFX 「MATRIX TRADER」 |
成行注文 | ストリーミング注文 クイック注文 |
.NET版 |
※主要FX会社の取引ツールはPC版のうちの1つを調査。PC版の別の取引ツールやスマホアプリなどでは注文の名称が異なる可能性もある
まず、「純粋ないわゆる成行注文」と「成行的な注文」がハッキリ分かれている代表例としてヒロセ通商「LION FX」を見てみましょう。
同社のその場で出してすぐ約定させようとする注文を見てみると、「純粋ないわゆる成行注文」である「成行注文」と「成行的な注文」である「ストリーミング注文」や「クイック注文」に分けられます。
ヒロセ通商「LION FX」が使っている「成行注文」という名称は外為どっとコム「外貨ネクストネオ」やSBI FXトレード、FXトレード・フィナンシャル「FXTF MT4・1000通貨コース」、IG証券「標準」、JFX「MATRIX TRADER」でも同様の意味で使われており、いくらでもいいから買ったり売ったりする注文としてスタンダードな名称のようです。
次に、ヒロセ通商「LION FX」の「ストリーミング注文」はスリッページ設定機能がある「成行的な注文」の1つですが、この名称はDMM.com証券「DMM FX」やマネーパートナーズ「パートナーズFX nano」、FXトレード・フィナンシャル「FXTF MT4・1万通貨コース」、JFX「MATRIX TRADER」でも使われており、「成行的な注文」の典型的な名称と言えるでしょう。ヒロセ通商「LION FX」の「ストリーミング注文」と「クイック注文」の違いについては後述します。
同一FX会社でもコースによって注文方法が微妙に違う
ここで、主力取引システムとしてメタトレーダー4(MT4)を採用しているFXトレード・フィナンシャルを見てみましょう。FXトレード・フィナンシャルには「FXTF MT4・1000通貨コース」と「FXTF MT4・1万通貨コース」の2つの口座があります。
たとえば、両口座の米ドル/円のスプレッドを比べてみると「FXTF MT4・1000通貨コース」は0.3銭原則固定、「FXTF MT4・1万通貨コース」は0.8銭原則固定と、両口座はスプレッドの広さに差があることがわかります。
そんな両口座はスプレッドに加えてスリッページにも大きな違いがあり、スプレッドの狭い「FXTF MT4・1000通貨コース」では「純粋ないわゆる成行注文」である「成行注文」、スプレッドの広い「FXTF MT4・1万通貨コース」では「成行的な注文」である「ストリーミング注文」が提供されているのです。
こういったなかで状況をやや複雑にしているのがマネーパートナーズ「パートナーズFX」の「ストリーミング注文」です。
先ほど「ストリーミング注文は『成行的な注文』の典型的な名称」と述べましたが、「パートナーズFX」の「ストリーミング注文」はそちらではなく、いくらでもいいから買ったり売ったりする「純粋ないわゆる成行注文」に分類されます。世の中すべてがわかりやすくできているわけではないんですね…。
「パートナーズFX」にスリッページ設定機能がない理由は?
そんなマネーパートナーズ「パートナーズFX」のその場で出してすぐ約定させようとする注文は「純粋ないわゆる成行注文」に分類される「ストリーミング注文」だけで、スリッページ設定機能がある「成行的な注文」はありません。
FX取引で通常、スリッページは必然的に発生するものだし、スリッページ設定機能がないと相場が大きく動いたときに思わぬ価格で注文が約定してしまうリスクがあるように感じますが、マネーパートナーズ「パートナーズFX」にはどうしてスリッページ設定機能がないのでしょうか。
このことについては、個人トレーダーとして億単位の利益を上げた経歴を持ち、2020年11月までマネーパートナーズの社長を務めた奥山泰全氏が2010年、ザイFX!とのインタビューで
「すべらせていいんだったら、当社はもっと儲かっていますよ。でも、お客さまに見えにくいからといってそんなことをするのは、お客さまに対する背信行為だと思うんですね。ボクがユーザーだったら、そういう会社はイヤです。だから、マネーパートナーズは出したレートは必ず受ける(約定させる)形でやっているんです」
と話してくださいました。
マネーパートナーズ「パートナーズFX」では「スリッページはお客さまに対する背信行為」というポリシーのもと、顧客がクリックした発注時のレートで「即約定」させてから、その後にカバーを取りにいくというしくみを遂行しているのです。
【参考記事】
●マネーパートナーズ・奥山社長に聞く(3) 狭いスプレッドはどこかにトリックがある
●マネーパートナーズ・奥山社長に聞く(4) 「即約定」の秘密はどこにあるのか?
マネーパートナーズでは「約定力」という言葉を「スリッページや約定拒否が発生せずに、お客様の意図するタイミングと価格での取引ができる力」と定義しているのですが、矢野経済研究所が2018年12月に実施した「主要FX会社7社へのFXサービスパフォーマンステスト」で唯一、スリッページや約定拒否が発生しなかったのがマネーパートナーズ「パートナーズFX」のPC版からのストリーミング注文でした。
【参考記事】
●約定拒否&スリッページ発生0件のFX会社。10年連続約定力第1位達成の秘訣とは?
しかも10年連続約定力第1位、10年連続スリッページゼロというのはすごいことですよね。マネーパートナーズ「パートナーズFX」に「成行的な注文」がないのは、社長のポリシーに基づいてスリッページを発生させないしくみにしているから、ということのようです。
(出所:マネーパートナーズ)
「パートナーズFX nano」にはスリッページ設定機能がある
そんなマネーパートナーズ「パートナーズFX」は取引単位が1万通貨なのですが、マネーパートナーズにはもう1つ、100通貨から取引できる「パートナーズFX nano」という口座もあります。
そして、「パートナーズFX」と「パートナーズFX nano」には取引単位だけでなく、スリッページに関して重大な違いがあるのです。
その重大な違いとは、「パートナーズFX」のその場で出してすぐ約定させようとする注文ではスリッページが発生しない一方、「パートナーズFX nano」ではスリッページが発生する可能性があるということです。
しかも「パートナーズFX」と「パートナーズFX nano」のその場で出してすぐ約定させようとする注文の名称がいずれも「ストリーミング注文」なので、さらにややこしいのですが…。
【参考記事】
●スベらないFXを取るか? スプレッドの狭さを取るか? マネパの2口座を徹底比較
●マネパの2つの取引ツールでスリッページ設定に重大な違いがある件について
●マネパでいったい何が起こっているの!? 相次ぐスプレッド縮小で2つの口座が逆転!
●スプレッド縮小恒常化&グルメキャンペーン復活! 名物社長のトレード診断&サイン本も!?
つまり、「パートナーズFX」の「ストリーミング注文」はスリッページが絶対発生しないという、極めて特殊な「純粋ないわゆる成行注文」なのに対し、「パートナーズFX nano」の「ストリーミング注文」はスリッページ許容幅を設定できるごく普通の「成行的な注文」ということになります
(出所:マネーパートナーズ)
ここでひとつ気をつけたいのは「パートナーズFX」のつもりで「パートナーズFX nano」を発注すると、設定幅以上のスリッページが発生した際は注文がキャンセルされるということ。自分が意図したとおりの取引を行うためには、自分が使うFX口座の取引ルールをよく知っておく必要がありますね。
「成行的な注文」に分類される「成行注文」は多機能な場合も
さて、記事前半でスリッページ設定機能がある「成行的な注文」の典型的な名称は「ストリーミング注文」だと書きましたが、面倒くさいことに、「成行的な注文」の名称を「成行注文」としているFX会社もそれなりにあるのが実情です。
「成行的な注文」の名称がすべて「ストリーミング注文」ならわかりやすいのに、なんだか紛らわしいですね!?
けれど、「成行的な注文」に分類される「成行注文」が紛らわしいのには、そうならざるを得ない理由もあるのです。
というのも、「成行的な注文」に分類される「成行注文」のなかには、スリッページ設定機能と「純粋ないわゆる成行注文」を兼ね備えたものもあるからです。
たとえば、GMOクリック証券「FXネオ」の「成行注文」ではスリッページの許容設定幅を空欄にすると「純粋ないわゆる成行注文」を発注できます。
また、トレイダーズ証券「みんなのFX」やトレイダーズ証券「LIGHT FX」、サクソバンク証券「スタンダードコース」の「成行注文」ではスリッページ設定機能をOFFにすると「純粋ないわゆる成行注文」を発注できるのです。
このような「成行注文」で発注する場合、スリッページ設定機能がある「成行的な注文」で発注したいのか、「純粋ないわゆる成行注文」で発注したいのか、自分の意図する取引に合わせて設定する必要があります。
スリッページ設定機能にもFX各社で違いがある
そして、主要FX会社のスリッページ設定機能自体にも違いがあります。
スリッページ設定機能は設定幅以上のスリッページが発生した際、注文がキャンセルされる機能であることは紹介しましたが、トレーダーにとって有利な方向に設定幅以上のスリッページが発生しても、その注文はキャンセルされてしまうのが通常です。
ですが、トレーダーに有利な方向に設定幅以上のスリッページが発生した際、注文をキャンセルせず、有利な価格で約定すると明言している口座も主要FX会社の中にいくつかあります。
記者が確認できた限りだと、YJFX!「外貨ex」やヒロセ通商「LION FX」、外為どっとコム「外貨ネクストネオ」、SBI FXトレード、マネーパートナーズ「パートナーズFX nano」、JFX「MATRIX TRADER」は上記のようなことを明言していました。
ヒロセ通商「LION FX」や外為どっとコム「外貨ネクストネオ」、SBI FXトレードのスリッページについて詳しくは以下の【参考記事】をご覧ください。
【参考記事】
●クイズです! ユーロ/ドル0.5pips原則固定、業界最狭水準スプレッドのFX会社はどこ?
●もはや全方位スキなし!? グルメ系FX会社が数々の企業努力で取引高国内第3位に!
●キャンペーンを一新したSBI FXトレードの公表データに見るスリッページの実態とは?
●最優良執行で顧客に不利な約定一切なし! 有利なスリッページならどこまでもスベる~
GMOクリック証券の「スピード注文」、各社で似た機能が
続いて、記事前半でヒロセ通商「LION FX」の「ストリーミング注文」や「クイック注文」の違いについて後述すると書きましたが、その前にGMOクリック証券「FXネオ」について触れなければなりません。
GMOクリック証券「FXネオ」では2010年1月に「スピード注文」という発注機能がリリースされました。
(出所:GMOクリック証券)
GMOクリック証券「FXネオ」の「スピード注文」は1つのコンパクトな画面内でリアルタイムレートや保有中のポジション情報などを一目で確認することができ、新規、決済、ドテン、同一通貨の全決済などもワンクリックでできる便利な発注画面です。
2012年以降、GMOクリック証券以外のFX会社も「スピード注文」に似た発注機能を搭載し始め、2019年現在でも主力の発注機能としているFX会社が多いのです。
【参考記事】
●めちゃくちゃ便利なスピード注文機能。各社のアプリ画面を画像つきで徹底比較!
●葉那子が究極の徹底調査! 主要10社のスピード注文系システム、その最新事情
スピード注文系発注画面、「あり」と「なし」で分けてみると…
そこで今度は、主要FX会社のその場で出してすぐ約定させようとする注文において保有ポジション情報を確認できるものを「スピード注文系発注画面あり」、確認できないものを「スピード注文系発注画面なし」として分類してみましょう。
FX会社 「口座」 取引ツール |
スピード注文系 発注画面なし |
スピード注文系 発注画面あり |
GMOクリック証券 「FXネオ」 |
− | 成行注文 スピード注文 |
ブラウザ取引画面 | ||
DMM.com証券 「DMM FX」 |
− | ストリーミング注文 |
DMMFX PLUS | ||
YJFX! 「外貨ex」 |
リアルタイム注文 | ワンタッチ注文 |
Cymo NEXT | ||
ヒロセ通商 「LION FX」 |
ストリーミング注文 成行注文 |
クイック注文 |
LION FX C2 | ||
外為どっとコム 「外貨ネクストネオ」 |
マーケット注文 成行注文 |
スピード注文2 スピード注文 |
リッチアプリ版 | ||
SBI FXトレード | − | 2WAY注文 成行注文※ |
Web版 | ||
マネーパートナーズ 「パートナーズ FX nano」 |
− | ストリーミング注文 |
クイック発注ボード | ||
マネーパートナーズ 「パートナーズ FX」 |
− | ストリーミング注文 |
クイック発注ボード | ||
トレイダーズ証券 「みんなのFX」 |
− | 成行注文 |
FX トレーダー | ||
トレイダーズ証券 「LIGHT FX」 |
− | 成行注文 |
アドバンスドトレーダー | ||
セントラル短資FX 「FXダイレクトプラス」 |
− | 成行注文 スピード注文 |
Web取引システム | ||
サクソバンク証券 「スタンダードコース」 |
成行注文 | − |
SaxoTraderGo | ||
IG証券 「標準」 |
マーケット注文 成行注文 スリップ幅 指定注文 |
− |
Webブラウザ版 取引システム |
||
FXトレード・フィナンシャル 「FXTF MT4 ・1000通貨コース」 |
成行注文 | − |
FXTF MT4 | ||
FXトレード・フィナンシャル 「FXTF MT4 ・1万通貨コース」 |
ストリーミング注文 | − |
FXTF MT4 | ||
JFX 「MATRIX TRADER」 |
成行注文 ストリーミング注文 |
クイック注文 |
.NET版 |
※主要FX会社の取引ツールはPC版のうちの1つを調査。PC版の別バージョンやスマホアプリなどでは注文の名称や分類が異なる可能性もある
※SBI FXトレードの「成行注文」は新規注文メニューから発注する場合、「スピード注文系発注画面なし」に分類される
※外為どっとコム「外貨ネクストネオ」は「スピード注文2」「スピード注文」の中にも「成行」と「マーケット」を選択するボタンがあり、前者であればスリッページ許容幅が設定できず、後者であればスリッページ許容幅が設定できるようになっている。
まず、「スピード注文系発注画面なし」と「スピード注文系発注画面あり」がハッキリ分かれている代表例としてYJFX!「外貨ex」を見てみましょう。
YJFX!「外貨ex」の「純粋ないわゆる成行注文」である「リアルタイム注文」は「スピード注文系発注画面なし」、スリッページ設定ができる「成行的な注文」である「ワンタッチ注文」は「スピード注文系発注画面あり」となっています。
「純粋ないわゆる成行注文」ではポジション情報を確認できず、スリッページ設定ができる「成行的な注文」ではポジション情報を確認できるというのは、棲み分けができていて、わかりやすいですよね。
それでは記事前半で後述すると書いたヒロセ通商「LION FX」はどうでしょうか。
ヒロセ通商「LION FX」の「純粋ないわゆる成行注文」である「成行注文」は「スピード注文系発注画面なし」、「成行的な注文」である「ストリーミング注文」も「スピード注文系発注画面なし」であるのに対し、同じく「成行的な注文」である「クイック注文」は「スピード注文系発注画面あり」となっています。
「ストリーミング注文」と「クイック注文」はスリッページ設定ができる「成行的な注文」であることは同じですが、「ストリーミング注文」ではポジションを確認できず、「クイック注文」ではポジションを確認できるという違いがあるわけです。
「成行注文」が「スピード注文」に近づいたGMOクリック証券
一方、「スピード注文」と言えば、GMOクリック証券「FXネオ」が元祖なわけですが、GMOクリック証券「FXネオ」の“成行系注文”である「成行注文」と「スピード注文」は、その両者とも保有ポジション情報が確認できる仕様になっています。
GMOクリック証券「FXネオ」の「成行注文」は2016年2月まで保有ポジション情報が確認できない、昔ながらの「成行注文」でした。保有ポジション情報が確認できる「スピード注文」と棲み分けができていて、YJFX!「外貨ex」と同様に、ある意味、こちらの方がわかりやすかったのです。
けれど、2016年2月にGMOクリック証券「FXネオ」がブラウザ取引画面を大幅にリニューアルしたとき、同口座の「成行注文」は保有ポジション情報が確認可能な「スピード注文系発注画面あり」の仕様に変わったのです。「成行注文」の方が「スピード注文」に近づいたというわけです。
【参考記事】
●4年連続FX取引高世界一のあのFX会社が新FX口座をリリース! スプレッド縮小も!
●新FXネオの約定力を検証! 大荒れ中でも500万通貨が即約定!4分で156万円の利益
●約定スピード6倍! FX取引高世界1位のあの会社で新システムがベールを脱いだ!
その他の「スピード注文系発注画面あり」の注文だけを提供しているFX口座についても、GMOクリック証券「FXネオ」が「スピード注文」を進化・拡大させていっていることを見て、「スピード注文系発注画面あり」の注文だけを提供するようになった(?)のかもしれませんね。
なお、サクソバンク証券「スタンダードコース」やIG証券「標準」、FXトレード・フィナンシャル「FXTF MT4・1000通貨コース」や「FXTF MT4・1万通貨コース」は保有ポジションを確認できない「スピード注文系発注画面なし」の注文だけを提供していますが、この4口座には外資系という共通点があります。
今回の記事では、“成行系注文”には、同じ名称の注文機能でも、FX会社によって意味が違うケースのあることがおわかりいただけたと思います。逆に違う名称でも機能は同じということもあります。トレーダーにとって、スリッページ設定機能はかなり重要な事柄。そういったことがFX口座によって異なっており、その状況はかなり複雑です。
しかし、より儲けられるトレーダーになるためには、そのあたりの複雑な状況もしっかり把握した上で、自分の意図したとおりの発注ができる口座を選ぶとか、相場状況によって口座を使い分けるといった心配りが必要なのではないでしょうか。
(ザイFX!編集部・藤本康文&ザイFX!編集長・井口稔)
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