ジャクソンホール会議は、FRB要人からタカ派発言が相次ぐも、パウエル議長の講演はハト派に
今月(8月)もっとも重要なジャクソンホール会議が、8月27日(金)にオンライン形式で行われました。
【参考記事】
●ジャクソンホール会議が行われる建物はジャクソンホール? なぜ、ジャクソンホールは世界中のトレーダーの注目を集めるのか?
日本時間23時に、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の講演が行われましたが、その直前には米国の要人からタカ派な発言が続きました。
ボスティック米アトランタ連銀総裁は「雇用増加が引き続き堅調であれば、10月のテーパリング開始が合理的」、「テーパリングをできるだけ早期に終了させたい」。
ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁は「テーパリングは遅いよりも早い方が良い」。
メスター米クリーブランド連銀総裁は「年内にテーパリングが開始されると予想」。
カプラン米ダラス連銀総裁は「テーパリングを早期に開始すべき」。
ブラード米セントルイス連銀総裁は「テーパリングを開始し、2022年第1四半期に終了するべき」。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
ハト派な内容も一部ありましたが、ほとんどがタカ派な内容となり、パウエル議長の講演前には、米ドル/円は110.26円まで上昇しました。
タカ派な発言が続いたこともあり、パウエル議長もそれに続く可能性も出てきていましたが、パウエル議長の発言内容は、
「年内のテーパリングが適切になり得る」
「テーパリングは利上げ時期を示す直接的なシグナルではない」
それまでタカ派発言が続いていた中、年内のテーパリングについての内容はあったものの、利上げはまだ先ということが示されたことで、パウエル議長の発言はハト派に受け取られ、米ドル/円は109.70円まで下落、ユーロ/米ドルは1.1809ドルまで上昇しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
2013年のときのように、テーパタントラム(※)とならないように、市場に徐々に織り込ませており、非常にうまい内容だったと思いますが、ただ目立った発言内容もないため、米ドル安の動きも8月27日(金)だけで止まっています。荒れさせないという点も、うまいというべきなのだと思います。
(※編集部注:「テーパタントラム」とは、量的金融緩和の縮小に対して金融市場が混乱を起こすこと)
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米雇用統計が良い結果となれば、9月FOMCでテーパリング開始を示唆する可能性も出てくる
今週、9月3日(金)には、8月分の米雇用統計の発表があります。
パウエル議長の講演からは、テーパリングの時期が9月・11月・12月のどれか、はっきりしないですが、雇用統計が良い数字であれば、9月21日~22日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)でテーパリング開始を示唆する可能性も出てきます。
【参考記事】
●ジャクソンホール会議は、今年もオンライン開催。パウエル議長は、テーパリング開始を示唆する? その場合、為替はどう動く?(8月24日、バカラ村)
現在、市場予想は11月にテーパリング開始を示唆し、12月から量的緩和を縮小していくというものが多いように思います。
金融機関によっては、10月に臨時のFOMCを開催して、そこでテーパリングを示唆するというものもありますが、9月のFOMC以降に状況が極端に変わらない限り、11月まで待つのではないかと思います。
前回、テーパリングが示唆された2013年は、テーパリングが終了してから利上げまで約1年ほどの期間がありました。
今回も同じようなスケジュールとなれば、テーパリング終了が来年(2022年)半ばとなった場合、利上げは2023年ということになります。
利上げ時期はまだ先ということもあり、ナスダック総合指数などは最高値を更新しています。
(出所:TradingView)
為替市場もリスク選好として、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が上昇しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
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季節性から、10月から年末に向けて米ドル/円は上昇しやすい。クロス円は押し目があれば買ってみてもよさそう
IMM(国際通貨先物市場)ポジションでは、円売りポジションが増えてきています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
9月に、一時的なポジションの巻き戻しが起きることがあるかもしれませんが、季節性からは、10月から年末に向けては米ドル/円が上昇しやすい時期になります。
パウエル議長が金融市場をコントロールできていること、そして、3兆5000億ドルの教育や気候変動対策などの財政政策も決まる中で、リスク選好にもなりやすいため、クロス円は押し目があれば買ってみてもいいように思います。
豪ドルに関しては、IMMポジションでは約5万6000枚まで売りに偏ってきています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
2015年3月のときは約7万7000枚まで売りに偏っていたため、豪ドルにはまだ売り余地があることになりますが、リスク選好となれば豪ドルは買われやすい通貨になるため、豪ドル/円やニュージーランドドル/円は押し目買いでいいのではないかと考えています。
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