(「ザイFX!で振り返る2010年(1) 【為替・経済の動き 前編】」からつづく)
2010年を振り返るこのシリーズ。今回お送りするのは【為替・経済の動き】の後編です。まずは9月に行われた為替介入の話から。これはかなりのサプライズでしたね。
ついにやったぞ! 6年半ぶりの為替介入!!
米ドル/円が下落し、歴史的な安値である79.75円に近づいていく過程で、6年半ぶりに行われたのが政府・日銀による為替介入。
単発のイベントとしては、これが2010年最大の話題だったかもしれない。
野田財務相は米ドル/円が90円を割れた夏ごろからしきりに口先介入を行っていた。
しかし、
「重大な関心を持って市場を注視している。必要な時には断固たる措置をとる」
といったほぼ同じ内容のコメントをオウムのように繰り返し、実際には何もやらないといったことが続いたため、マーケットはやがて野田財務相の発言を何とも思わなくなっていったように思える。
実際には何もやらない、何もできないと思い込んでいたところで…。 突如ドーンと来ました! 9月15日の為替介入!!
この時、ザイFX!のチャートに、とてつもない大陽線が立っているのを見たとき、「とうとうやったなぁ!」と記者はコーフンしたものである。記者にとってもこれが介入初体験だった。
1日の円売り介入額としては史上最大となる2兆1249億円を投入し、円売り米ドル買いを行ったこの介入によって、米ドル/円は83円割れの水準から86円の手前まで、約3円一気に上昇したのである。
為替介入のあと、相場はどうなるものなのか?
このころ、ザイFX!連載陣のコラムを読んだり、元ディーラーの方々へ取材をすると、ほとんどが「介入は効かない。介入は絶好の売り場」という見解ばかりという状況だった。
あまりにもそのような見解ばかりだったので、「もしかしたら逆に介入は意外と効くんじゃなイカ?」などとも記者は考えたのだが…。
結果は経験豊富なみなさんが仰っていたとおりだった。米ドル/円はその後、結局、介入した水準を越えてさらに下がっていったのだ。
そして、79.75円という歴史的安値に近づいていくことになる。その件は前回の記事で振り返ったとおりだ。
(出所:米国FXCM)
米ドル/円は9月15日の介入のあとも不意にドーンと吹き上げることが時々あり、「すわっ、介入か?」と色めき立つことがあった。しかし、これは介入を装った「なんちゃって介入」だったようだ。
その後の財務省の発表によって、9月に行われた介入は9月15日の1日だけだったことが明らかになっている。
【関連記事】
・日本政府・日銀が円売り介入を実施! 米ドル/円は84円台へ1円以上の急伸!(9月15日)
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・日本政府・日銀の円売り介入は至極当然。単独介入でも効果がないわけではない!(今井雅人、9月16日)
・「サプライズ介入」の「カラクリ」教えます! 今回も「為替政策」ではなく「デフレ対策」(吉田恒、9月16日)
・元ディーラー西原宏一×松崎美子対談(1) ついに為替介入実施! 今後の展開は?(9月17日)
・「スーパー介入」効果は10月半ばまでか? 介入の日米合意の裏に「中国の影」が…(吉田恒、9月21日)
・介入警戒感が強い時に仕掛けられる「なんちゃって介入」とはなにか?(松田哲、10月6日)
・テクニカルのプロが語る「介入があっても米ドルを買ってはいけないワケ」(10月6日)
米国市場では金価格が史上最高値を更新!
金(ゴールド)の価格はここ数年上昇基調にあるが、米国市場の「NY金」が史上最高値をグングン更新していったのも2010年の相場で目立ったことの1つだった(ただし、国内市場の「東京金」は史上最高値にはまだ遠い)。
(出所:米国FXCM)
欧州では財政危機、米国はQE2で米ドルジャブジャブという状況下、“ペーパーマネー”に対する信任は全般的に低下。その一方で、「実物資産」として金(ゴールド)に注目が集まり、買われている状況だ。
【関連記事・関連情報】
・NYダウや金にも直接投資できるCFD取引会社を徹底比較!(2009年12月29日以降、随時更新)
・金価格は連日の最高値更新! 将来的な通貨への不安の裏返し。(持田有紀子、5月13日)
・金とドルインデックス、どちらが「ニセモノ」? 金が「偽り」ならドルはいったん切り返す!(陳満咲杜、9月24日)
(次ページではNYダウ1000ドル暴落の話題などを…)
NYダウが数分で1000ドル近くの暴落!
短期的な相場の動きとしては、5月6日の暴落も激しかった。
この日、NYダウはわずか数分間で1000ドル近くも下落。リスク回避の動きから、為替市場では急速な円高が進んだ。米ドル/円は94円台から87円台へ、ユーロ/円は121円台から110円台へ短時間で大きく下落している(ただ、その後の戻りも激しかったが…)。
(出所:米国FXCM)
「フラッシュ・クラッシュ」(瞬間暴落)と名づけられたこの現象は、当初は何らかの誤発注が原因ではないかと言われていた。
しかし、その後の調査の結果、これは誤発注が原因でないことがわかった。ある投資会社が大量の売り注文を出したことをキッカケに、高速のアルゴリズム取引がいくつも動き出し、自動的に売りが売りを呼ぶような展開になったようだ。
【関連記事】
・ダウ998ドル安の暴落で急激な円高に! 米国雇用統計発表で、さらに荒れ相場か?(5月7日)
・「5.6事件」は世界的な景気後退の前兆。危機進行でユーロ安ではなく米ドル安に!(陳満咲杜、5月7日)
・「5・6パニック」はセリング・クライマックスか!? ユーロ売り・米ドル買いの逆回転に注意!(吉田恒、5月11日)
北朝鮮が韓国を砲撃! 為替は一時円安に
11月23日、韓国の延坪島(ヨンピョンド)を北朝鮮が砲撃した“事件”にも驚かされた。これに対して韓国軍も反撃し、一時的に南北は交戦状態となった。
日本は近隣国であるため、この“事件”に関する報道が流れた直後、円は一時的に売られる展開となった。
(出所:米国FXCM)
ただ、戦闘状態が継続し、戦線が拡大するようなことにはならなかったため、相場への影響は一時的なものに止まっている。
とはいえ、北朝鮮は何を起こすか、わかりにくい国。朝鮮半島は潜在的な有事のリスクを抱えたままだ。
【関連記事】
・北朝鮮が韓国の島へ数十発以上も砲撃! 韓国と交戦状態となり、為替は一時円安に(11月23日)
・地政学的リスク、北朝鮮が韓国へ砲撃!マーケットの反応を動画で解説します。(ZERO、11月24日)
・北朝鮮が韓国を砲撃した本当の理由とメルケル独首相の「失言」について(陳満咲杜、11月26日)
日本振興銀行が破たん! 日本初のペイオフ発動!!
9月10日、日本振興銀行が破たん。日本では初めてとなるペイオフが発動された。
相場に対する影響は大きくなかったものの、これも2010年の大きなニュースの1つだろう。
ちなみに日本振興銀行では取り扱っていなかったが、外貨預金はペイオフの対象外。だから、金融機関が破たんしても、外貨預金は保護されない。
銀行の外貨預金とFX、いざというときの安全性はどちらが高いのか? FXのほうが安全なのではないか? そんなことを改めて考えさせられた日本振興銀行の破たんだった。
【関連記事】
・日本振興銀行はついに破綻! 日本売りとしての円安へ(持田有紀子、9月10日)
・日本振興銀行の破たんで再確認。外貨預金はペイオフの対象外ですよ!(9月16日)
人民元が弾力化! でも、動きは小さい
6月19日、中国の中央銀行である中国人民銀行が人民元相場の弾力化を発表したことも、為替に関する大きなニュースの一つだった。
人民元は2005年7月にドルペッグ制から管理変動相場制へ移行していたが、世界的な金融危機を受け、2008年7月から再び事実上のドルペッグ制へ戻っていた。
そのため、世界各国から人民元の切り上げを求める声が高まっていたが、そうした中で発表されたのが人民元の弾力化だった。これにより、人民元相場は限定された範囲ではあるが動くようになった。
ただ、人民元の対米ドル相場は約半年で3%弱上昇しただけ。その動きは小幅なものに止まっている。
ちなみに、人民元は自由な取引が制限されていることもあり、取引できるFX会社は非常に少ない。
【関連記事・関連情報】
・イランの核問題が米中交渉の「影の主役」!? 人民元小幅切り上げで、円高は限定的に!(吉田恒、4月13日)
・中国はドルペッグ制の終了を示唆!リスクテークとなったが…(持田有紀子、6月21日)
・人民元弾力化で「危機」第2幕は来ない!? 中国はユーロ高&株高を教えてくれた!(吉田恒、6月22日)
・人民元改革の大騒ぎはしぼみ、シコリをつくっただけ?(持田有紀子、6月23日)
・松田哲さんの人民元相場大予想! 第2のプラザ合意で1ドル=2元割れが来る!?(8月13日)
・FX会社おすすめ比較:中国元が取引できるFX会社はここだ!
(「ザイFX!で振り返る2010年(3) 【FX業界編】はレバ規制で大騒ぎ!」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
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