日本人がFX取引を行うにはFX口座を開設する必要がありますが、FX口座は大きく分けて国内FX口座と海外FX口座の2つに分類されます。
そして、国内FX口座と海外FX口座では取引ルールや法律、税金、スペックなどに違いがあり、おすすめできるメリットとおすすめできないデメリットがそれぞれ存在するのです。
そこで、今回は国内FX口座と海外FX口座の何がどう違うのか、比較していきたいと思います。
【目次】
・レバレッジ
・日本の金融当局への登録
・トラブル発生時のサポート体制
・出金
・新規口座開設キャンペーン
・顧客資産の保管方法
・税金
・ロスカット
・スプレッド
・スワップポイント
海外FX口座はレバレッジ数千倍!?
海外FX口座はレバレッジ数千倍……そんな話を聞いたことがあるでしょうか。
レバレッジとはテコの原理を利用して手元の資金より何倍も大きな規模の取引を行うことができるしくみのこと。FXの大きな魅力のひとつとして挙げられるものです。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FXのレバレッジとは? 25倍固定のFX会社でリスクを抑えて取引する方法は?
かつて国内FXの個人口座では100倍や200倍といったハイレバレッジで取引できましたが、日本の金融当局の規制により、現在は最大レバレッジが25倍に制限されています。
国内FXの法人口座は個人口座と違って、レバレッジが通貨ペアごとに毎週見直されます。そして、国内FXの法人口座では、100倍台のハイレバレッジをかけられる通貨ペアも存在します。
けれど、海外FX口座のなかには、個人口座でも法人口座でも、これらを大きく上回る数千倍という超ハイレバレッジをかけられるところがあるというのです。
レバレッジをどの程度かけるかはトレーダー自身が調節するもの。超ハイレバで取引したい人にとって海外FX口座は国内FX口座より魅力的に見えるでしょう。
けれど、海外FX口座を運営する海外FX業者は日本の金融当局の登録を受けていないのです。そのため、ザイFX!でも基本的に無登録の海外FX業者をオススメしていません。
日本でFXを提供するには金融当局の登録が必要
そもそも、日本に住む日本人を対象にFX取引サービスを提供するには日本の金融当局への登録が必要です。
たとえば、GMOクリック証券は「関東財務局長(金商)第77号」という登録番号で金融商品取引業者の登録を受けています。
そんなGMOクリック証券「FXネオ」を含め、ザイFX!で紹介している国内FX口座はすべて、金融商品取引業者であるFX会社が提供しているものになります。
そのなかにはIG証券「標準」やサクソバンク証券「スタンダードコース」のように一見、海外FX口座っぽく見えるものもあります。
けれど、IG証券は英国を拠点とするIGグループの日本法人、サクソバンク証券はデンマークのコペンハーゲンを拠点とするサクソバンクの日本法人であり、もちろん日本法人である両社はともに日本で金融商品取引業者の登録を受けているわけです。
【参考記事】
●海外FXのハイレバ+ボーナスに潜むリスク。これからは低リスクで効率よく高収益を狙う!
●月曜日の窓埋めトレードを狙ってひと儲け! 午前3時からトレードすればニ度オイシイ…!?
そんな国内FXの個人口座のレバレッジが最大25倍であることは記事冒頭で触れたとおりです。
無登録の海外FX業者が日本人に営業行えば罰則の対象
一方、レバレッジが数千倍になることもある海外FX口座ですが、公式サイトやカスタマーサポートが日本語対応しているところは特に、国内FX会社が運営しているっぽく見える場合があります。
けれど、実際には日本の金融商品取引業者の登録を受けていない海外FX業者が運営しているわけです。
このことについて、関東財務局は「海外に所在する無登録業者とのFX取引等にご注意ください!」と注意を喚起する文書を公開しています。
(出所:関東財務局「海外に所在する無登録業者とのFX取引等にご注意ください!」)
このなかで関東財務局は、無登録の海外FX業者に対して以下のように指摘しているのです。
海外に所在する業者であっても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行う場合は、原則として、金融商品取引業の登録(我が国の「金融商品取引法」に基づく登録)が必要です。登録を受けずに金融商品取引業を行うことは禁止されています(金融商品取引法違反として罰則の対象)
(出所:関東財務局「海外に所在する無登録業者とのFX取引等にご注意ください!」)
つまり、無登録の海外FX業者が日本人相手に営業を行うことは金融商品取引法違反として罰則の対象となることが明記されているわけです。
そして、金融庁は無登録の海外FX業者の名称や所在地を公表し、警告書を送付しています。
(出所:金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)
海外FX業者のなかには海外の金融当局で登録を受けているところもあるのですが、金融庁はそういった海外FX業者に対しても警告書を送付しています。
当然と言えば当然ですが、日本の金融商品取引業者として登録されているかどうかが金融庁の警告書送付の基準になっているわけです。
国内FX口座でのトラブルには相談窓口がある
国内FX口座と海外FX口座ではトラブルが発生した場合のサポート体制にも違いがあります。
国内FX口座でトラブルが発生した場合、以下の相談窓口があります。
●証券・金融商品あっせん相談センター
●金融サービス利用者相談室
●国民生活センター
証券・金融商品あっせん相談センターは株やFXなどの取引に関するトラブルについて相談や苦情を受け付け、解決を図る機関です。
その証券・金融商品あっせん相談センターは、FXの自主規制団体である金融先物取引業協会(金先協会)を含む5つの自主規制団体が連携して運営しており、金融庁や法務省から認証を受けています。
続いて、金融サービス利用者相談室ですが、こちらは金融庁が設置している相談窓口です。金融トラブルについて相談に乗り、アドバイスや他機関の紹介を行います。
そして、国民生活センターは消費や生活に関するトラブルの相談に応じてくれる機関です。
海外FX口座でトラブルが起きても実質泣き寝入り!?
次に、海外FX口座でトラブルが発生した場合はどうなるのでしょうか。
海外FX口座は日本の金融当局に無登録の海外FX業者が運営しているため、証券・金融商品あっせん相談センターや金融サービス利用者相談室のサポートは受けられません。
国民生活センターに海外FX口座でのトラブルを相談することはできますが、国民生活センターは2014年6月に海外FX口座に関する消費者へのアドバイスとして以下のことを公開しています。
1.海外の業者との取引に伴うリスクを理解し、無登録の業者との契約は行わない
2.「絶対もうかる」などのセールストークをうのみにしない
3.FX取引はリスクの高い取引であることを理解し、取引の仕組みがよく分からなければ契約しない
4.トラブルにあったら消費生活センター等に相談する
(出所:国民生活センター)
つまり、海外FX口座に手を出してはいけないと国民生活センターは注意喚起しているわけです。
海外FX業者には日本の法律が及ばないのが原則ですから、海外FX業者とのトラブルを日本の法律で解決するのは非常に困難であり、実質泣き寝入りするしかないのが現状です。
ザイFX!×ビットコインで以前取材した、億り人の個人投資家MOONトレーダーさんも、実際に海外FX業者とのトラブルに見舞われたトレーダーのひとりです。
【参考記事】
●ビットコイン急騰劇をズバリ予想! 億り人の意外な前歴と儲かる手法!?をマル秘公開!
上の【参考記事】にあるように、MOONさんは海外FX業者を利用して2000万円以上の利益を出したのですが、その約定が取り消されたというのです。
MOONさんは当然抗議しましたが判断は覆らず、それ以来、海外FX業者は使っていないとのことでした。
利益が出ている海外FX口座から出金できない!?
先ほど国民生活センターのアドバイスを紹介しましたが、実はこのアドバイスは「利益が出ている海外FX口座から出金できないトラブル」に対するものでした。
すべての海外FX口座で出金拒否といったトラブルが起きるというわけではありませんが、実際に出金トラブルが起きてしまったら、弁護士を頼りにしたとしても解決は難しいということは認識しておくべきでしょう。
一方、国内FX口座からの出金については以前、ザイFX!で取り上げたことがありますが、基本的にはおおむね出金手続きが完了した日の翌日、遅いところでも翌々日の金融機関の営業日には出金依頼が反映されます。
そして、限定された時間帯においては、即時出金や当日出金に対応してくれるFX会社もいくつかあるのです。詳しくは以下の【参考記事】をご覧ください。
【参考記事】
●即時出金や当日出金ができるFX会社は? 主要各社の出金タイミングや手数料を調査
国内FX口座はキャッシュバックキャンペーンが多い
続いて、国内FX口座と海外FX口座の新規口座開設キャンペーンについて見ていきましょう。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●お得な口座開設キャンペーンを活用しよう♪ 普通に申し込むなんて、絶対もったいない!
ザイFX!で紹介している国内FX口座では、新規口座開設に関連したザイFX!限定タイアップキャンペーンや通常のFX口座開設キャンペーンが実施されているところが多いです。
キャンペーン内容は各口座によって違いますが、ザイFX!限定タイアップキャンペーンをザックリ説明すると、数万通貨といった一定の新規取引量を期限までに達成すると、数千円のキャッシュバックがもらえるといった感じです。
また、通常のFX口座開設キャンペーンは基本的に、新規取引量に応じて最大数万円から数十万円のキャッシュバックがもらえるものです。
そんな国内FX口座の新規口座開設キャンペーンは以下の【参考コンテンツ】で比較することができます。詳しくはこちらをご覧ください。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:キャンペーンで比べる
海外FX口座の破格のボーナスキャンペーンにご用心
一方、海外FX口座では口座開設ボーナスキャンペーンが実施されていることが多いようです。
ボーナスというのは出金できないけれど証拠金として使えるもので、ボーナスキャンペーンは口座開設しただけで数千円のボーナスがもらえるといったものです。
また、海外FX口座をすでに開設済みのユーザーでも、入金額の半額分や全額分をボーナスとしてもらえるといった破格のキャンペーンが実施されている場合があります。
そんな海外FX口座を口座開設する際、海外の金融当局に登録済みの口座では必要書類として身分証明書の提出を求められるようですが、海外の金融当局に未登録の業者の口座では、必要なのがメールアドレスだけということもあるようです。
そして、海外FX口座のIDやパスワードは郵送ではなくメールで送られてくるため、口座開設に丸1日かからないこともあるわけです。
つまり、海外FX口座はかなり気軽に新規口座開設できて、破格のボーナスが条件なしでもらえることもあるということになります。
もし、本当に入金額の半額分や全額分といったボーナスがもらえるのだとしたら、多めに入金してボーナスをたくさんもらいたいというのが心情というもの。
けれど、多額のボーナスが自分の口座に入金されたとしても、それが出金できなかったら元も子もありません。そして、先ほどから触れているとおり、海外FX口座では出金トラブルがたびたび起きているようなのです。
国内FX会社は信託保全が義務づけられている
続いて、国内FX会社と海外FX業者が倒産した場合の違いについて見ていきましょう。
金融商品取引業者である国内FX会社は金融商品取引法によって、顧客の口座にあるすべての資産を計算した日から2営業日以内に信託保全することが義務づけられています。
信託保全をするということは、国内FX会社が預け入れ先となる信託銀行に顧客の資産を金銭信託するということ。
金銭信託された顧客の資産は弁護士などの受益者代理人が第三者として管理しているため、国内FX会社が倒産したとしても、証拠金は受益者管理人から返還されるというわけです。
顧客の資産を計算した日から信託保全までには通常、2営業日のタイムラグがあるため、信託保全のしくみが備わっていたとしても、国内FX会社に万が一のことがあった場合に、顧客の資金のすべてが返還されるとは限らない面はあります。
けれど、SBI FXトレードのようにタイムラグのない即時信託保全サービスを提供しているところもあります。
また、国内FX会社は金融商品取引法によって自己資本規制比率を120%以上に保つことも義務づけられています。
自己資本規制比率は金融商品取引業者の財務の健全性を表す指標ですが、会社の規模を表す指標としては口座数、証拠金残高、資本金なども挙げられます。
これらの指標が高いほど信頼性も高いと言えるわけですが、ザイFX!には国内FX会社の信頼性を比較できるコンテンツがあります。
信頼性の高い国内FX会社を探している方は以下の【参考コンテンツ】をチェックしてみてください。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:会社の信頼性で比べる
海外FX業者が倒産したら資金は返還される?
一方、海外FX業者が倒産した場合、顧客が預けた資産の行方はどうなるのでしょうか。
海外FX業者のなかに海外の金融当局の登録を受けているところがあることは何度か触れてきましたが、海外の金融当局といってもいろいろな国の金融当局があります。
そのため、金融当局ごとに海外FX業者に義務づけるルールも異なり、顧客の資産の保管方法も分別管理だったり、信託保全だったりとまちまちなのです。
分別管理とは簡単に言ってしまうと、顧客の資産を海外FX業者の別口座で管理するということ。
信託保全では第三者が顧客の資産を管理しますが、分別管理では海外FX業者が自ら管理するため、安全性は分別管理のほうが劣るわけです。
また、分別管理を義務づける金融当局は、規制下にある海外FX業者が倒産した場合、顧客に返還する資産に限度額を設けることもあるのです。
そして、海外の金融当局の登録すら受けていない海外FX業者は信託保全や分別管理を義務づけられていないわけで、預けた資産の安全性は国内FX会社のほうが確実に高いと言えます。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FX会社選びで失敗しないためには? 自分に合ったFX会社を探す方法
国内FXの税率は20.315%。損益通算や繰越控除も可能
次に国内FX口座と海外FX口座の税金の違いについて見ていきましょう。
国内FXと海外FXのどちらにおいても、日本人が日本で利益を出した場合、自分で確定申告を行って税金を納める必要があります(※)。
(※サラリーマン、自営業・自由業、主婦・主夫、学生、年金生活者など自身の状況によって確定申告が必要となる条件は異なる)
けれど、国内FXと海外FXでは課税方法に違いがあり、国内FXに適用されるのは「申告分離課税」、海外FXに適用されるのは「総合課税」となっています。
国内FXに適用される「申告分離課税」というのは他の所得と合算せずに分けて課税する制度で、税率は一律20.315%(※)で固定されています。
(※本来は所得税15%・住民税5%で一律20%だが、2013年~2037年は、所得税に対して、さらに2.1%の復興特別所得税が課されるため、期間中の税率は所得税・住民税合計で20.315%となる)
また、国内FXでは確定申告の際、金融商品の枠を超えて各商品の利益と損失を相殺することができる「損益通算」という制度があります。
国内FXで出た利益は「先物取引に係る雑所得等」に分類されるのですが、同じく「先物取引に係る雑所得等」に分類されるバイナリーオプション、日経225先物、TOPIX先物、日経225オプション、商品先物、CFDなどと「損益通算」できるのです。
そして、国内FXで出た損失は「繰越控除」することもできます。「繰越控除」とは前年までの損失額と当年に出た利益を相殺することで、利益が出た年の納税額を少なく済ませることができる便利な制度。向こう3年に渡って使うことができます。
確定申告が必要となる条件は学生やサラリーマンなど立場によって違うのですが、国内FXの税金について詳しくは以下の【参考記事】にまとめていますので、こちらをご覧ください。
【参考記事】
●【2019年版】FXの税金/確定申告まとめ。20万円で申告が必要って、どういうこと?
海外FXの税率は仮想通貨取引と同じく最大55%
一方、海外FXに適用されるのは「総合課税」ですが、「総合課税」というのは対象となる所得を合算した上で課税がなされるもので、税率は所得金額に応じて高くなっていきます。
具体的にはその税率は課税所得に対して15%~55%となります(※)。海外FXでの利益が大きくなるほど税率も高くなり、納税額も増えるしくみとなっているわけです。
(※復興特別所得税を加味せずに記載)
海外FXと同様に、ビットコインなどの仮想通貨取引にも「総合課税」が適用されるのですが、その最高税率は55%ですから、がんばって利益を出しても半分以上が税金として持っていかれてしまう可能性もあるのです。
海外FXや仮想通貨取引の税金について詳しくは以下の【参考記事】をご覧ください。
【参考記事】
●【2019年版】FXの税金/確定申告まとめ。20万円で申告が必要って、どういうこと?
●ビットコイン/仮想通貨の税金について。会社員や主婦(夫)でも確定申告が必要に!
●税理士・三瀬氏に聞く2012年確定申告(2) 海外FX口座は税率20%でなく最大50%!?
国内FX口座のロスカットは証拠金がマイナスになることも
続いて、国内FX口座と海外FX口座のロスカットの違いについて見ていきましょう。
国内FX口座では、含み損(保有しているポジションの未確定損失)がある一定の水準に達すると、ポジションを強制的に決済させられる「ロスカット」というしくみが導入されています。
このロスカットは「金融商品取引業等に関する内閣府令(金商業等府令)」によってFX会社へ義務づけられた制度なのです。
そして、ロスカットを発動する水準として主に適用されるのが「証拠金維持率」です。主要な国内FX会社ではだいたい、50%~100%あたりの証拠金維持率でロスカットが発動されます。
たとえば、米ドル/円が100円で推移していると仮定して、米ドル/円1万通貨の買いポジションを作るとすると、必要となる証拠金は4万円です。
100%の証拠金維持率でロスカットが発動されるFX口座の場合、相場が自分の予想と反対方向に動いて含み損が膨らんだ結果、預かり証拠金が減っていって、それが4万円まで減った時点でロスカットとなります。
証拠金維持率の判定時刻や必要証拠金の細かい算出方法など、各口座でルールの違いはありますが、ザックリ言うと、ロスカットというしくみによって4万円が守られた、ということになるわけです。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FXのロスカットとは? 含み損の拡大を自動的に回避。投資家の資産を守る最後の砦
けれど、為替レートが激変しているときは、ロスカット時のレートが想定されるレートから大きく離れる可能性もあります。
最悪の場合、ロスカットが間に合わず、口座内の証拠金がゼロを突き抜け、マイナスになることもあるのです。
このマイナス分のことを金先協会は「ロスカット等未収金」と定義しているのですが、そのロスカット等未収金はいずれ、トレーダーがFX会社に支払わなければなりません。
ロスカット等未収金を支払いたいトレーダーなんているはずがないのですが、実際に、2019年年明けに発生したフラッシュクラッシュでは米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が大暴落し、ロスカット等未収金も比較的大規模なものになったのでした。
【参考記事】
●フラッシュクラッシュのロスカット等未収金は過去3番目の規模! 25%がくりっく365から発生
「ゼロカット」は金商法で禁止されている損失補填
一方、海外FX口座ではロスカットに加えて、「ゼロカット」という独特なしくみを導入しているところが多いようです。
この「ゼロカット」というのは、国内FX口座の「ロスカット等未収金」にあたるマイナスの証拠金が発生した場合、それを帳消しにしてくれるというもの。
レバレッジが数千倍になることもある海外FX口座ですから、為替レートの変動でロスカットが間に合わなくなる場面は国内FX口座より多そうですし、マイナスの証拠金が「ゼロカット」になるなら、かなりありがたいサービスと言えます。
けれど、本来はトレーダーが支払うべきマイナスの証拠金がゼロになるということは、その分を海外FX業者が補填しているということにほかなりません。
金融商品取引法では損失補填が禁止されており、国内FX会社が損失補填を行うと違法になります。そんな損失補填を海外FX業者はゼロカットというしくみで行っているのです。
レバレッジが数千倍になることもあるということは、マイナスの証拠金の規模も大きくなるはずで、それをゼロカットしていたら海外FX業者の経営状況が悪化する可能性もあります。
また、海外FX口座では「ゼロカットを導入しているけれど、実際にはゼロカットにならなかった」といったトラブルが発生した場合、日本の法律での解決が難しいということは本記事で何度も伝えてきたとおりです。
海外FX口座は手数料か上乗せスプレッドのコストがかかる
続いて、国内FX口座と海外FX口座の取引コストについて見ていきたいのですが、その前に触れておかなければならないことがあります。
それは、多くの国内FX会社がDD(ディーリング・デスク)方式を採用している一方、海外FX業者は基本的にNDD(ノー・ディーリング・デスク)方式を採用しているということです。
DD方式をザックリ説明すると、トレーダーはFX会社と取引し、FX会社がその先のカバー先金融機関と取引をする形のこと。
NDD方式では、トレーダーは実質的にはFX会社を介さず、インターバンク市場の金融機関と直接取引をするような感じになります。
FX会社の作為が入らない分、NDD方式のほうが取引の透明性が高く、スキャルピングに向いていると言われることがあります。
そんなNDD方式が2014年、国内FX業界でブームの兆しを見せたことがあり、ザイFX!でもたびたび取り上げました。以下の【参考記事】ではNDD方式について詳しく説明していますので、興味がある方はぜひご覧ください。
【参考記事】
●【徹底解剖】2014年大注目のNDD(1) NDDでマイナススプレッドが出る原理
●【徹底解剖】2014年大注目のNDD(2) NDDでスキャルパーが歓迎されるワケ
●【徹底解剖】2014年大注目のNDD(3) NDD口座比較の隠れたポイントとは?
また、ひと口にNDD方式といっても、手数料などのつけ方で違いが出てきます。
外付け手数料がつくものと、外付け手数料は無料ながらインターバンク市場で提示されたレートにスプレッドを上乗せして提示するマークアップ方式というものに分かれるのです。
それでは海外FX業者ではどうなっているかというと、外付け手数料がつく口座とマークアップ方式の口座の2つが基本的に用意されています。
そして、スプレッドに関しては、外付け手数料がつく口座における手数料込みの実質スプレッドのほうが、マークアップ方式の口座のスプレッドより狭いところが多いようです。
XM(エックスエム)やTitanFX(タイタンFX)など規模が大きいと思われる海外FX業者において、外付け手数料がつく口座の米ドル/円の実質スプレッドを記者が調べたところ、おおむね1銭台といった感じでした。
なかには0.6銭という、がんばっている口座もありましたが、そういった低スプレッドの海外FX口座ではレバレッジが数千倍ではなく数百倍に設定されていたり、ボーナスキャンペーンの金額が低めだったりするようです。
国内FX口座の取引コストは安い
一方、DD方式を採用している国内FX会社の裁量トレード口座はほとんどが手数料無料です。
また、さまざまな通貨ペアでスプレッド縮小競争が発生することも多く、主要な国内FX会社の多くが米ドル/円のスプレッドを0.3銭原則固定で提供しています。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FXのスプレッドとは? 1つの通貨ペアに2つのレート。FXの取引コストは超激安!
なかでも、業界最狭水準の米ドル/円のスプレッドを提供しているのがSBI FXトレードで、1000通貨までだと0.2銭原則固定、1001通貨から100万通貨だと0.27銭となっています。
ここまでをまとめると、海外FX口座における外付け手数料込みの実質スプレッドや上乗せされたスプレッドより、国内FX口座のスプレッドのほうが狭く、取引コストが安いということになります。
以下の【参考コンテンツ】では国内FX口座の主要通貨ペアのスプレッドを比較できますので参考にしてみてください。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:取引コストで比べる
海外FX口座の高金利通貨はスワップ高め&スプレッド広め
最後に、国内FX口座と海外FX口座のスワップポイント(スワップ金利)はどうなっているのでしょうか。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FXのスワップポイントとは? 毎日もらえてポジションを持ち続けると収益が増える!?
国内FX口座と海外FX口座のスワップポイントをザックリ比べると、主要な通貨ペアにおいては国内FX口座のほうが基本的に高いようです。
一方で、高金利通貨のドルストレート(米ドルが絡んだ通貨ペア)やユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)、英ポンドクロス(英ポンドと米ドル以外の通貨との通貨ペア)においては、海外FX口座のほうが高いスワップポイントを提示している場合があります。
けれど、これらの通貨ペアはスプレッドが非常に広くなっており、海外FX口座の高金利通貨で高いスワップポイントをもらうには高い取引コストを支払わなければならない状況となっています。
そして、海外FX口座のスワップポイントには特徴的な点があります。それは保有ポジションを決済しないとスワップポイントが現金化されないということです。
つまり、海外FX口座で保有ポジションのスワップポイントだけを出金しようとしてもできない、ということになります。
一方、国内FX口座では保有ポジションから得られるスワップポイントの取り扱いが各FX会社によって異なります。
海外FX口座と同様に、保有ポジションを決済しないとスワップポイントが現金化されないところもあれば、スワップ振替やスワップ受取といった機能を使って保有ポジションに付与されているスワップポイントを現金化できるところもあります。さらに、何もしなくても自動的にスワップポイントが日割りで現金化され、口座に直接付与されるところもあるのです。
スワップポイントは口座内で現金化されると課税対象となりますので、課税のタイミングも各FX会社によって異なるということになります。
【参考記事】
●あの投資家たちのFX確定申告の実態(2) 含み損なのにスワップ分を納税する悲劇!?
●【2019年版】FXの税金/確定申告まとめ。20万円で申告が必要って、どういうこと?
そんな国内FX口座の主要通貨ペアのスワップポイントについては以下の【参考コンテンツ】で比較することができます。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:スワップポイントで比べる
また、高金利通貨であるトルコリラ/円やメキシコペソ/円、南アフリカランド/円のスワップポイントについても、以下の【参考記事】や【参考コンテンツ】で比較することが可能です。
【参考記事】
●メキシコペソ/円が取引できるFX会社を徹底比較! スワップポイントやスプレッドは?
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!「トルコリラ/円スワップポイントの高い順」
●FX会社おすすめ比較:南アフリカランド/円が取引できるFX会社はここだ!「南アフリカランド/円スワップポイントの高い順」
ここまで国内FX口座と海外FX口座の違いを比較してきましたが、海外FX口座は超ハイレバといった特徴があるものの、日本の法律的に問題があり、トラブル時のサポート体制、運営体制に大きな不安を抱えています。さらに、税金やスペックの面から見ても国内FX口座を選んだほうが有利であることがわかりました。
ザイFX!としては、FX口座を開設するなら、日本で日本人相手に営業することを日本の金融当局に許可された、安全・安心な国内FX口座を開設することをおすすめします。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較
(ザイFX!編集部・藤本康文)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)