レバレッジとは
「レバレッジ(leverage)」は「テコの原理」のことで、支点・力点・作用点の3点を使って、小さな力で大きなものを動かすしくみです。FXにはこのレバレッジのしくみが取り入れられています。
FXは証拠金を担保に取引しますが、必要証拠金(取引に必要な証拠金)の額は、実際の取引規模に必要な資金よりも非常に低く設定されています。つまり、FXではレバレッジを利用することで、投下資金よりも大きな規模の取引が可能になります。こうしたしくみの取引はレバレッジ取引と呼ばれ、レバレッジを使った資金効率の良さのことを「レバレッジ効果」と言います。
2021年現在、個人のFX口座のレバレッジは最大で25倍までに制限されています。これは、必要証拠金の額が、実際の取引で必要となる資金量の25分の1、つまりは4%を下回らない範囲で設定する必要があるということです。
レバレッジが最大の25倍なら、100万円規模の取引をするときの必要証拠金の額は、100万円の4%となる4万円が最低ラインという意味になります。
過去には100倍や200倍の時代も
かつてはレバレッジに関する規制がなく、多くのFX会社で100倍や200倍といった高いレバレッジで取引できた時代もありました。レバレッジが200倍なら、為替レートが100円のときの1万通貨取引に必要な必要証拠金の額は5000円です。現在の最大レバレッジ25倍では、同じ条件の取引でに必要な必要証拠金の額は4万ですから、資金効率には8倍もの開きが生じます。
・レバレッジ200倍…100円×1万通貨÷200=5000円
・レバレッジ25倍…100円×1万通貨÷25=4万円
しかし、レバレッジは高ければ良いというわけではありません。
たとえば、1万通貨取引を米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)で行った場合、為替レートがポジションを建てた値段から0.5円(50銭)変動すれば、5000円の損益が発生します。これはレバレッジが何倍(必要証拠金の額がいくら)だろうと、取引量は同じなので変わりません。
ですが、レバレッジが200倍の場合、5000円の損益は為替レートが100円のときの必要証拠金の額と同じです。5000円の利益なら、投資資金に対する収益率は100%ですが、5000円の損失なら、投資資金をすべて失います。
同じ条件でも、現行の上限となる25倍のレバレッジなら、5000円の損益が4万円の必要証拠金額に占める割合は12.5%にとどまります。もし、取引がうまくいかずに5000円の損失となっても、手元に3万5000円の資金が残ります。
レバレッジが高ければ、必要証拠金の額は比例して安くなるのが普通ですから、同じ資産で保有できるポジションの量も多くなり、投機的要素が強くなります。そのため、ポジションを持ちすぎてしまい、少しの為替レートの変動で損失が大きく膨らんで、FXから去る人もかつては少なくありませんでした。
そこで、金融庁は2010年にFX会社が個人の口座に提供しても良いレバレッジの比率を最大で50倍に規制し、翌年の2011年には現行の25倍まで引き下げて、極端に投機的な取引ができないよう規制をかけたのです。
レバレッジが低くなっても安心はできない
とはいえ、現在の最大25倍でも、1回の取引で取り返しのつかない事態に陥る可能性が絶対にないとは言い切れません。
たとえば、為替レートが100円のとき、外貨預金で1万通貨の外貨を購入する場合は100万円の資金が必要ですが、レバレッジ25倍(最大)のFXなら、同じ規模の取引が4万円の必要証拠金で行えます。
そして、仮に為替レートが100円から96円に下落してしまった場合、どちらも4万円の損失が発生します。
このとき、100万円の資金を使っている外貨預金では手元に96万円が残りますが、FXの場合では投下資金のすべてを失います。
・外貨預金…100万円(投下資金)-4万円(損失)=96万円
・FX…4万円(投下資金)-4万円(損失)=0円
FXにはロスカット制度があるため、実際に資産がゼロになる可能性は低いですが、FXでは外貨預金に比べて、投資資金に対する損失の割合が大きくなることがわかると思います。
レバレッジを利用できるということは、資金効率が良く、高い利益率を期待できる反面、損失の割合も大きくなる可能性があるということです。取引するときは常に、実際は必要証拠金額の最大25倍規模の取引を行っているという自覚を持つことが大切です。
レバレッジを自分で管理する方法
国内すべてのFX会社の個人向け口座は、レバレッジが最大で25倍に収まるように、各通貨ペアの必要証拠金額を設定しています。
2021年5月現在、YJFX!「外貨ex」(1倍・10倍・25倍)、FXブロードネット「ブロードライトコース」(20倍・25倍)、FXブロードネット「ブロードコース」(1倍・20倍・25倍)、松井証券「MATSUI FX」(1倍・5倍・10倍・25倍)などの口座は、25倍を超えない範囲内でレバレッジの倍率を数段階に分けて設定して、トレーダーがその中から選択できるしくみを取り入れています。
レバレッジの倍率が低ければ、その分、必要証拠金の額は高くなりますが、リスクを抑えた取引を行いたいと考えている方などにとっては、25倍よりも低いレバレッジを設定しているFX口座を選んで取引するのも良いと思います。
しかし、レバレッジを数段階から選択できるしくみを導入しているFX口座はそれほど多くなく、一般的には主要通貨ペアのレバレッジを一律25倍固定で提供しているFX口座の方が主流です。
そうしたFX口座で取引するときに大切なのが、預かり証拠金(総資産)とポジションの比率を考えて、相対的なレバレッジを管理することです。
たとえば、100万円規模の取引を4万円の必要証拠金で行う場合、口座に4万円を入金して、その4万円すべてを必要証拠金に使って取引すれば、総資産に対するポジションのレバレッジは25倍です。でも、口座に10万円を入金して、その中の4万円を必要証拠金に使って取引しているときは、総資産に対するポジションのレバレッジは10倍へ低下します。
・預り証拠金4万円…100万円÷4万円=25倍
・預り証拠金10万円…100万円÷10万円=10倍
極端ですが、口座に100万円を入金して100万円規模(必要証拠金4万円)の取引を行えば、総資産に対するポジションのレバレッジは1倍となり、外貨預金と同じような感覚で取引していることになります。
総資産に対するレバレッジを1倍まで低下させると、資金効率の良さというFXのメリットは低減するかもしれません。しかし、FXなら価格の下落局面も収益チャンスにできますし、外貨預金よりも低コストなので、外貨預金による資産運用を考えている方が、低いレバレッジを意識しながらFXを活用するのもアリだと思います。
ポジションの絶対金額を意識
総資産(預かり証拠金)に対するレバレッジの比率をどれだけ低くしても、取引条件が同じであれば、発生する損益の額は変わりません。資金に余裕をもって取引すれば、相対的なレバレッジは抑えられるという話にすぎませんが、預かり証拠金を基準に建てるポジションの絶対金額を意識しながらトレードすることを、常に心がけるようにしておく必要があるでしょう。
資産に対するレバレッジはどのぐらいが良いのか? 言い換えれば、いくら入金して、どれぐらいのポジション量で取引すれば良いのかは、トレードスタイルや許容できるリスクの度合いで変わります。
最初に許容できるリスクや損失額を決めて、レバレッジが高くなりすぎないよう、無理のない範囲で取引することが大切です。
(最終更新日:2021年5月10日)
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