■2021年は全体的に米ドル安予想が多い
来年(2021年)は、どんなマーケットになるのか?
そろそろ、主要金融機関の来年度の予想が出てくる頃ですが、全体的に米ドル安予想が多いと思います。
そのもっとも大きな理由は、米国の低金利が続くことです。
先日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で提示されたドットチャートでは、利上げ予想が少し増えたとはいえ、基本的にほとんどの委員が2023年末まで現状のゼロ金利が続くと予想しています。
(出所:FRB(米連邦準備制度理事会))
しかし、米国以外の国も、ほぼ「ゼロ金利」です。
ゼロとゼロであれば、相場は動かないように感じますが、重要なのは「実質金利」です。各国金利からインフレ率を引いたものになります。
【参考記事】
●米ドル/円は、いつかは円高方向へ調整か! ゼロ金利下で為替を動かすのはインフレ率(9月9日、志摩力男)
米国は他の主要国よりもインフレ率が高めで、コロナ前は2%弱の水準でした。表向きの名目金利がお互いゼロでも、インフレ率が高い国ほど、実質金利は低くなります。
次に、来年はワクチンの普及により、ものすごく景気が良くなると考えられていることです。
特に米国は、トランプ大統領の「ワープスピード」の恩恵を受け、4月には集団免疫を獲得します。6月にはカナダ、7月には英国がそれぞれ集団免疫を獲得するでしょう。
【参考記事】
●新型コロナ治療薬への期待が相場押上げ! 銅価格上昇で豪ドル/米ドルは0.7000ドルへ(4月30日、西原宏一)
コロナウィルスの変異種が出てきて、それに対する警戒感は強いですが、今のところ変異種に対しても現行のワクチンは有効と見られています(効かなかった場合、事情は変わってきます)。
米国は、4月以降、普通の日常が戻ります。これまで我慢していた分、消費は爆発するでしょう。景気は良くなります。
景気が良くなると、米国人は他の国への投資を活発化する傾向があり、それが米ドル安をもたらします。
ユーロ/米ドルは1.30ドル方向、ブレグジット交渉がうまく行けば、英ポンド/米ドルは1.40ドルから1.45ドル方向だと思います。
【参考記事】
●クリスマス前にブレグジット合意は実現!? 合意なら英ポンド/ドルは1.40ドルを目指す(12月16日、志摩力男)
●ブレグジット最終局面! 英ポンド/ドルは合意ありで1.40、合意なしで1.20ドル方向か(12月9日、志摩力男)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■資源国や観光資源に恵まれた国の経済は上向く
世界的な好景気は、資源価格を安定化させます。
中国経済も安定しているので、現在「銅」や「鉄鉱石」の価格が上がっていますが、商品全体的に安定することになりそうです。
【参考記事】
●ブレグジット交渉に注目! 英ポンドが上がれば、英ポンド/豪ドルの売りを想定(12月21日、西原宏一&大橋ひろこ)
●豪ドル、鉄鉱石急騰を受けて上昇継続! 長期では水素燃料関連の報道も買い材料に(12月17日、西原宏一)
そうなると、資源国は有利です。また、観光地にも人が戻ることになるので、観光資源に恵まれた国の経済は上向くでしょう。
豪ドル/米ドルは0.80ドルを超えて上昇しそうです。ニュージーランドドル/米ドルも同様に0.75ドル方向でしょう。米ドル/カナダドルは1.20カナダドルをテストすることもあると思います。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■新興国でイチオシはメキシコ。南アやトルコにも資金は戻る
新興国でイチオシはメキシコですが、南アフリカや、ファンダメンタルズが悪いトルコにも資金は戻ることになると思います。
メキシコペソ/円は5.5円目標、南アフリカランド/円は7.5円方向でしょうか。トルコリラは、トルコ中銀の政策次第です。
【参考記事】
●利上げ期待で上昇のトルコリラ。政策金利据え置きなら、対円で13円前後まで下落か(12月23日、エミン・ユルマズ)
●ワクチン普及で株高・円安の復活に期待! 引き続き資源国通貨や新興国通貨の買いで(12月17日、今井雅人
●新興国通貨の相場見通し、為替チャート、スワップポイント比較などの情報集
●スワップポイントが魅力のメキシコペソ投資を徹底解説。為替チャートからわかる見通しは?
●メキシコペソ/円が取引できるFX会社を徹底比較! スワップポイントやスプレッドは?
●南アフリカランドの特徴や為替見通しを徹底解説。FXで取引するポイントは?
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■2017年から2020年の米ドル/円が動かなかった理由
では、米ドル/円はどうなるのか――。
2017年、2018年と僕は米ドル上昇もあるかなと思っていました。トランプ大統領の経済政策が大きな理由です。米金利は上昇局面に入ったと思いました。
そして2019年、2020年は円高予想でした。米中貿易戦争が理由でした。
しかし、実際に起こったのは米ドル/円が動かなかったことです。
【参考記事】
●トランプ退場で、為替市場の動きに期待! ドル安・円安の懐かしい相関関係に戻りそう(12月2日、志摩力男)
●米大統領交代で円高になれば、米ドル/円は100円を割り込み、少し大きな動きになるか(10月28日、志摩力男)
(出所:TradingView)
なぜ、これほどまで米ドル/円が動かなくなったのか。日本に入る資金、出る資金が均衡していたからでしょう。
日本の経常収支は、このところ安定的に比較的大きな、年間20兆円ほどの黒字です。
しかし、その黒字の多くは投資収益なので、日本国内に還流せず再投資されているから円高要因にならなかったのでしょう。
また、かつては大きかった貿易収支の黒字が、今ではほとんどゼロになっています。
輸出企業はどうしても資金を円転しないといけないですが、そういう円買い需要はなくなっています。
そして、日本からのM&Aがこのところ大きく、その分も経常黒字からくる円高を防ぎました。
【参考記事】
●「342兆円」VS「1855兆円」の行方は新型コロナウイルス次第。リーマンショック級の不景気も!?(2月27日、志摩力男)
■2021年の米ドル/円は95~105円程度がコアのレンジか
ただ、それにしても4年間も動きがないというのは異常です。
日本のインフレ率は低いので、購買力平価は毎年下落していきます。つまり、動かなかったというのは、事実上、円安になっているということです。
各国の物価を比較すると、日本の安さは際立っています。賃金は惨めなほど安くなりました。
菅首相は、おそらく最低賃金引き上げに動くと思われますが、アルバイトの時給でも先進国は1500~2000円が普通です。1000円以下というのは、日本ぐらいでしょう。
以前のコラムも書きましたが、ビッグマック指数では、米ドル/円はかなり円高になっていないと説明がつきません。物価面では円高にならないとおかしいのです。
【参考記事】
●円高示唆でも米ドル/円が下落しないワケは? ビッグマック指数では1ドル=68.78円になる!?(6月17日、志摩力男)
よって、少し円高方向かなと思っていますが、強い確信はありません。95~105円程度がコアのレンジで、92~107円というのが広いレンジと思っています。
(出所:TradingView)
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