■株式市場は堅調。その原因は…?
このように、米ドル/円はリスクオンとリスクオフに振り回されながら、狭い値幅で推移しましたが、米国の代表的な株価指数は調整を挟みながらも、年後半にかけて断続的に史上最高値を塗り替えるなど、1年を通じて強い動きとなりました。
【参考記事】
●米国株の本格的なバブルはこれからだ! 米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない(11月1日、陳満咲杜)
●主要クロス円の反落は押し目買いの好機。NYダウのバブルは3万ドルを超えてから!(11月15日、陳満咲杜)
※2019年12月13日(金)までのデータ
(出所:Bloomberg)
その株高の一因として考えられるのが、世界的な景気の低迷懸念を背景とした、主要国の金融緩和です。
トランプ大統領の金融緩和圧力が、どれだけ影響したのかはわかりませんが、米国ではFOMC(米連邦公開市場委員会)がバランスシートの縮小ペースを5月から減速させ、9月には完全停止。さらに、7月・9月・10月のFOMCで各0.25%の利下げを実施し、10月からは財務省証券の買い入れも開始しました。
【参考記事】
●超ハト派でサプライズを与えたFOMC! 政策金利見通し下方修正。米ドル/円は…!?(3月22日、今井雅人)
ECB(欧州中央銀行)も、9月に中銀預金金利のマイナス幅拡大と、債券買い入れ策の再開を決定。RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は3回(計0.75%)、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])は2回(計0.5%)の利下げに踏み切りました。
こうしたことが、主要国の長期金利の水準押し下げと、流動性の供給につながり、株式市場の堅調さをサポートしたと考えられます。
【参考記事】
●今の株高は欧米のQEによるカネ余り相場!? 英ポンドは総選挙に向けた上昇に期待!(11月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
●ECBとFRBは金融緩和も日銀は動かず… 米ドル/円は108円台半ばへ上昇後、反落(9月19日、西原宏一)
●主要国の中銀が通貨安合戦へ!? FOMCの注目点と米ドル/円の今後の行方を予想!(7月30日、バカラ村)
■ブレグジットにもようやくゴールが!
そして、当初は2019年3月末にEUからの離脱が完了するはずだった英国では、2度の離脱期限延期と首相交代劇を経て、つい先日となる12月12日(木)に、ブレグジットの命運を握る下院総選挙が実施されました。
【参考記事】
●ブレグジット混迷で英議会は崩壊寸前!? メイ首相は条件付きで辞任表明するも…(4月1日、松崎美子)
●6カ月間延長で、EU離脱日は10月31日に。2度目の国民投票実施はあり得るのか!?(4月15日、松崎美子)
●新英首相ボリス・ジョンソンってどんな人? 合意なき離脱を呼ぶ!? ナルシストの正体!(7月30日、松崎美子)
●【ブレグジット】12月12日に英総選挙。2020年1月の離脱がメインシナリオに
●どうなる? 12月12日英総選挙。6つの予想シナリオから英ポンドの動きを大予測!(12月6日、松崎美子)
メイ前首相のあとを継いで7月に就任したジョンソン首相。10月末の離脱を目指していたが、野党が過半数を占める議会では離脱案が承認されず、保守党の過半数獲得を目指して総選挙を実施した (C)Justin Sullivan/Getty Images
結果は多くの方がご存知のとおり、ジョンソン首相率いる保守党が、定数650の過半数(326)を上回る365議席を獲得。選挙前は保守党の議席が過半数に満たず、採決にすら持ち込めなかったEU離脱協定案が議会で承認され、2020年1月末までに一定の合意のもとでEUから離脱する見通しがたちました。
【参考記事】
●英総選挙の出口調査で保守党が圧勝! 対中関税も見送りへ…ポンド急騰&円下落
英ポンド/米ドルは、当初の離脱期限が迫る3月中旬にそれまでの高値をつけたあと、1度目の離脱期限延期決定(4月)、メイ前首相の辞任表明(5月)、ジョンソン首相の就任(7月)などを経て、合意なき離脱への警戒感も高めながら、英国民投票があった2016年6月以来の安値となる1.20ドル割れまで下落。
その後は、合意なき離脱は回避できそうとの見方から反発に転じ、総選挙の出口調査で事前予想を超える保守党の優勢が伝わると、1.35ドル台まで急騰して年初来高値を更新しました。
※2019年12月13日(金)までのデータ
(出所:Bloomberg)
英ポンド/円も、総選挙後に年初来高値こそ更新しなかったものの、英ポンド/米ドルと似たような動きとなりました。
※2019年12月13日(金)までのデータ
(出所:Bloomberg)
2020年1月末の離脱期限に向け、年末から年始にかけて、もう一段の動きがあるかにも注目です。
■お騒がせ通貨が今年は優等生!?
最後に、昨年(2018年)は米金利上昇と米ドル高で資金流出にあえいだ新興国通貨の中から、トルコリラ/円とメキシコペソ/円の動きも振り返っておきましょう。
【参考記事】
●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(1)米ドル一強! その時トルコショックが起きた
まず、ここ数年は毎年、史上最安値を更新し続け、突然の暴落をたびたび演じてきた「お騒がせ通貨」のトルコリラ/円。年初のフラッシュ・クラッシュ時だけでなく、8月にも瞬間的な暴落に見舞われたり、トルコリラの翌日物スワップレートが暴騰して、一部のFX会社でとんでもない高額のスワップポイントが付与される出来事が発生するなど、2019年も折に触れて話題を提供してくれました。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?
●おはぎゃ~の原因はトランプではない!? 午前7時台はトルコリラの“魔の時間帯”か
●8月26日早朝、トルコリラが急落したワケは? 米中貿易交渉次第で対円は17円台前半も…(8月28日、エミン・ユルマズ)
●たった1日で2416円の異常事態!?トルコリラのスワップポイントが急騰したFX会社は?
ところが、トルコリラにネガティブな材料が、それなりにあったにもかかわらず、2019年のトルコリラ/円の年間変動幅はたった(!?)の4.68円にとどまり、史上最安値の更新もありませんでした。
【参考記事】
●イスタンブール市長選挙、やり直し決定! トルコリラは大幅下落! 再選挙の行方は…(5月8日、エミン・ユルマズ)
●イスタンブール市長再選挙は与党大敗! エルドアン政権弱体化で解散総選挙も…!?(6月26日、エミン・ユルマズ)
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
※2019年12月のローソク足は12月13日(金)までのデータ
(出所:Bloomberg)
ここ数年のダイナミックな下落トレンドからは距離を置き、狭めのレンジで安定して推移したと言える展開でした。
スワップポイント(スワップ金利)狙いでトルコリラ/円の買いポジションを保有していたトレーダーにとっては、ポジションの含み損や含み益が一方的に広がることもなく、スワップ収益の恩恵を享受できた、良い年だったのではないでしょうか?
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FXのスワップポイントとは? 毎日もらえてポジションを持ち続けると収益が増える!?
●スワップトレードのメリットとデメリットを解説! トレードに適したFX会社は?
ただ、トルコ国内のインフレが落ち着き、トルコ中銀が断続的な利下げへ舵を切ったこともあり、トルコリラ/円のスワップポイントの水準は、年央から年後半にかけて各社でかなり低下しました。トルコリラ/円のスワップ運用に、一時期ほどの旨味が感じられなくなったという見方も、できなくはなさそうです。
【参考記事】
●トルコ中銀が4.25%の大幅利下げを実施! でも、トルコリラが上昇しているワケとは?(7月31日、エミン・ユルマズ)
●3.25%の利下げ…だけどトルコリラ上昇!? 原油急騰によるトルコリラへの影響は?(9月18日、エミン・ユルマズ)
●トルコ中銀、予想外の2.50%利下げ実施! それでもトルコリラが堅調なのは、なぜ?(10月30日、エミン・ユルマズ)
■スワップ運用にもってこいだったメキシコペソ/円
メキシコペソ/円は5円台での推移が継続し、変動幅が1円にも満たない相場となりました。
※2019年12月のローソク足は12月13日(金)までのデータ
(出所:Bloomberg)
2019年は、メキシコペソ/円を取り扱うFX会社がさらに増え、メキシコペソ/円のスワップポイントは、主要なFX会社で年間を通じて比較的、高い水準が維持されていましたから、トルコリラ/円よりも、スワップ運用にはもってこいの相場環境だったように感じます。
【参考記事】
●スワップポイントが魅力のメキシコペソ投資を徹底解説。為替チャートからわかる見通しは?
●メキシコペソ/円が取引できるFX会社を徹底比較! スワップポイントやスプレッドは?
一定のレンジ幅を設定して、自動で新規注文と決済注文を繰り返してもらうシステムトレードなどでも、安定した運用を繰り返してくれたのではないかと考えられますね。金利水準がさほど変わらず、下値の堅い展開が続いてくれれば、スワップポイント狙いのトレーダーにとって、2020年も非常に魅力的な通貨ペアとして、存在感を示してくれそうです。
【参考記事】
●30代でセミリタイアした鈴氏はどんな方法でトラリピ確定利益780万円を達成したのか?
ということで、2019年は主要な通貨ペアでそれほど大きな動きが見られないまま、2020年を迎えることになりそうです。
注目は高かったものの、米中貿易摩擦とブレグジットという2大テーマは、昨年から引き継がれてきたものであり、マーケット関係者が食傷気味になっていたり、最終的な着地点がわかってからでないと、ポジションを大きく傾けづらいといった心理が働いていたのかもしれません。
2020年はこの2つのテーマを凌駕して、市場の注目を一気にかっさらうような新しい材料が出現するのか? そのあたりのことも予測しながら、年末に向けて2020年のトレード戦略を練ってみてはいかがでしょうか。
次回は、ザイFX!で2019年を振り返ろう【業界編】をお届けします。お楽しみに!
(「ザイFX!で2019年を振り返ろう!(2) 米ドル/円0.1銭原則固定のFX会社も出現!」へつづく)
(ザイFX!編集部・堀之内智)
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