スキャルピングのポイント
スキャルピングの主なポイントや特徴は以下のとおりです。
・ 取引時間がとにかく短い
・ 短い時間軸とテクニカル分析がメイン
・ 他のトレードスタイルより取引チャンスが多い
取引時間がとにかく短い
「スキャルピング(scalping)」は、新規取引から決済取引までを数秒から数十秒、長くても数分で完結させる超短期の取引手法です。スカル(頭蓋骨)の皮を剥ぐ行為が語源(scalp)になっていることから、「スカルピング」と呼ぶこともあります。
数pips(銭)から多くても10pips程度の狭い値幅の利益を、まさに薄い皮を剥ぎ取るように積み重ねていきます。スキャルピング取引をするトレーダーは「スキャルパー」と呼ばれます。
1回のトレードで狙う値幅が狭く、取引時間が短いので、売買回数は1日に十数回~数十回ほどになることが多いようですが、中には百回以上も取引するスキャルパーもいるみたいです。
1分足や5分足がメイン
使用するチャートは1分足や5分足、長くても15分足くらいまでの短い時間軸が一般的です。
短期的な値動きを獲りにいく手法のため、テクニカル分析を重視してエントリーや決済のポイントを探るのが主流で、移動平均線やボリンジャーバンドなどを表示させながら取引している人が多いようです。

(出所:サクソバンク証券)
トレードチャンスが多い
時間足や日足では、ほとんど動いていないように見える相場でも、1分足や5分足では狭い値幅ながら、一時的にトレンドが発生していることは結構あるので、他のトレードスタイルと比べると売買チャンスは多く訪れます。
超短期決戦なので、たくさんトレードをしたい方、トレードできる時間が限られる方にとっても、良いスタイルかもしれません。
ただし、トレードチャンスが常にあるかといえば、そうとも言いきれません。トレードする時間帯はある程度、考慮する必要があるでしょう。為替市場は24時間、休みなく開いていますが、動きやすい時間帯とそれほど動かない時間帯はあります。
狭い値幅の動きならそれなりにあるとはいえ、あまり相場が動かない時間帯に一生懸命、取引画面に張り付いていても、チャンスが頻繁に訪れる可能性は低くなると思います。
為替市場は通常、日本時間の20時ごろから翌日の1時ぐらいまでの時間帯が、比較的、値動きが活発になると言われています。ロンドン市場の午後と、NY(ニューヨーク)市場の午前が重なっているため、取引参加者が多いという理由が挙げられます。
また、その時間帯は米国の重要経済指標が多く発表されるので、経済指標の結果によっては、相場が大きく動く可能性があるからです。
自分の取引する通貨ペアが、どの時間帯に動きやすいのかを知っておくことは、トレードをするうえで非常に大切です。これは、スキャルピングよりもう少し取引時間が長いデイトレードでも、同じことが言えます。
スキャルピングのメリット
スキャルピングの主なメリットは以下のとおりです。
・ 為替レートの変動に対応しやすい
・ 他のトレードスタイルよりも資金効率が良い
相場の急変に対応しやすい
スキャルピングでは、基本的にポジションを持っている間は相場に張り付いているため、突発的な材料やニュースで為替レートが急変したときも、即座に対応しやすいというメリットがあります。
相場を見ることができない時間帯に、自分のポジションをリスクに晒しておきたくないという方にも向いているトレードスタイルだと思います。
資金効率が良い
資金効率の良さもスキャルピングの魅力の1つです。利益を次のトレードに振り分けて、ポジション量を増やしながら勝ちを積み重ねていくことができれば、短期間で資金を何倍、何十倍に増やすことができる可能性もあります。
数万円や数十万円の元手資金を、数千万円や億といった金額にまで増やしたスキャルパーのほとんどが、こうした方法で資産を築いてきたと聞きます。
ただし、1回のトレードで狙う値幅が狭いため、効率よく資産を増やそうとすると、レバレッジを高めに設定しがちになります。リスク管理には細心の注意を払うよう、心がけなくてはいけません。1回のトレードで許容できる損失を抑えることができれば、少しずつ積み重ねてきた利益を一気に失う「コツコツドカン」に陥る可能性は、ぐっと低くなると思います。
リスク管理がしっかりできれば、他のトレードスタイルと比べて、1回の損切り取引がもたらす資産へのダメージは少なくて済みます。売買チャンスも多いので、非常に効率良くトレードできる可能性があります。
スキャルピングのデメリット
スキャルピングの主なデメリットは以下のとおりです。
・ 即座の判断力や操作スキルが必要
・ 高い勝率を維持しなければならない
・ トレードに適した通貨ペアが限られる
判断力や操作スキルが必要
スキャルピングには、即座の判断力と高い集中力が必要です。
1日に数十回、多いときには百回以上の超短期売買を繰り返すのが一般的と言われていますが、そこまで多くなくても、その都度、利益確定や損切りの判断を的確かつ瞬時に行う必要があります。ルールをしっかり守っているつもりでも、ちょっとした判断の迷いや決済の遅れが利益の取りこぼしにつながったり、利益確定のつもりが損切りになってしまうこともありえます。体力的にも大変です。
「ココだ」と思ったときに、すぐにエントリーや決済ができる、スピード面のスキルも必要です。
また、1回のトレードで狙う値幅が狭いので、資産を大きく増やそうと思って売買回数が膨らんでしまったり、レバレッジを高く設定してしまいがちになります。
高い勝率が必要
スキャルピングは勝率が極めて重要です。
たとえば、利食いと損切りの幅を同じにして、一定のポジション量でトレードを続けた結果、10回のトレードで6勝4敗、100回のトレードで51勝49敗なら、どちらも勝率は5割を越えます。
しかし、最終的な収益がプラスになるかといえば、おそらくそうではないでしょう。取引コストも考えなければいけないからです。
FXの売買手数料は無料が主流ですが、FXでは買値と売値の差の「スプレッド」が取引コストになります。2021年3月現在、原則固定における米ドル/円スプレッドの業界最狭(もっとも狭い)水準は0.1銭あたりと、極めて狭い状況ではありますが、仮に0.1銭で取引できたとしても、10回のトレードで合計1銭のコストはかかります。
すべてのFX会社が0.1銭のスプレッドで取引できるわけではありませんし、トレード回数が増えればその分、コストはかさんでいくので、勝率が5割を少し超える程度では、おそらくトータルの収支はプラスにならないでしょう。
適した通貨ペアが限られる
スキャルピングに適した通貨ペアも、必然的に限られてきます。
米ドル/円のスプレッドは、主要通貨ペアの中でもっとも狭い水準ですから、他の通貨ペアでスキャルピングをすれば、取引コストはそれ以上にかかります。
利食いの幅を広く、損切りの幅を狭く設定すれば、スプレッドが広めの通貨ペアでも、それほど高い勝率を維持する必要なく。最終的にトータルの収支がプラスになるかもしれませんが、損切りの回数が増えて、利食いの回数が減る可能性が高まります。一段と精度の高いエントリースキルも必要になってくるでしょう。
超短期売買であればあるほど、勝率を高く保つトレードを継続的に続けていかなければ、コスト負けになる可能性も高く、うまい具合に収益が積み上がっていかないのです。
スキャルピングに適したFX会社
スキャルピングは、スキャルピングに適したFX口座でトレードを行うのが効果的です。主なポイントは、以下の3つです。
・ スプレッドが狭い
・ 約定力に定評がある
・ スキャルピングを認めている
スプレッドが狭い
スキャルピングには、取引する通貨ペアのスプレッドが狭いFX会社を選ぶことが大前提です。
スプレッドの狭いFX口座で取引すれば、スプレッドが広いFX口座よりも取引コストは抑えられますし、なにより利益獲得の機会が増えます。
また、相対的にスプレッドの水準が狭い傾向にある、米ドル/円・ユーロ/米ドル・ユーロ/円などの、メジャーな通貨ペアで取引するのがおすすめです。
【キャンペーンスプレッドを含む各社の主要通貨ペアのスプレッドはこちら】
●FX会社おすすめ比較:取引コストで比べる
約定力に定評がある
ただし、単純にスプレッドの水準が狭いだけでは安心できるとは限りません。
狙ったレートと実際に約定したレートに差が出る「スリッページ」や、単純に注文を受け付けてくれない「約定拒否」の発生率が高ければ、思ったとおりにトレードできず、想定していた収益が得られなかったり、売買チャンスを逃すことにもなりかねません。約定力に定評があるFX会社を使ってトレードすることも、大切になってきます。
【スリッページに関する参考記事】
●あなたは経験したことがありますか? 怪しいスリッページやレートずらしを…
サクソバンク証券「スタンダードコース」、マネーパートナーズ「パートナーズFX」など、民間調査会社から約定力が高いFX口座として評価を受けているFX口座を使うことも検討する価値はあると思います。
スキャルピングを認めている
スキャルピングはシステムに大きな負荷がかかったり、カバーを取りづらかったりという理由もあって、はっきり許容しているFX会社はそれほど多くありません。本当かどうかはわかりませんが、頻繁にスキャルピングを行っている投資家の口座は、凍結させられるなんて話も一部では聞きます。
ただ、頻繁なスキャルピングとは、HFT(高頻度取引)やHST(高速取引)のように、極めて短い時間の中で大量の注文を繰り返し出すような取引のことを指していることが多いようで、一般的なトレードスタイルとして知られるスキャルピングがまったくできないFX会社は少ないと思います。
それでも心配な方は、公式サイトなどでスキャルピングを認めている以下のようなFX口座で取引するのも、1つの方法だと思います。
・ YJFX!「外貨ex」
・ サクソバンク証券「スタンダードコース」
・ FXプライム byGMO「選べる外貨」
・ JFX「MATRIX TRADER」
・ ヒロセ通商「LION FX」
・ セントラル短資FX「FXダイレクトプラス」
ほかにも、通信環境のあまり良くない場所や、スペック(処理能力)がそれほど高くないPCから注文を出すと、発注そのものができなかったり、FX会社に注文が届くのが遅れてしまうなどといった事態が生じることもあり得ます。トレードする環境も、しっかり整えて臨みたいですね。
まとめ
スキャルピングは、テクニックや取引環境に収益が大きく左右されるトレードスタイルです。
リスクをしっかり管理できれば、1回のトレードでマーケットからの撤退を余儀なくされるような致命傷を負う可能性はそれほど高くありませんし、取引できる時間が限られる方や、ポジションを長く持ち続けたくない方にも向いていると思います。
ですが、ある程度のトレード回数をこなしながら、その中で高い勝率を維持する必要があるため、勘と度胸だけでイキナリはじめるのは、ちょっと難しい面もあります。相場の値動きのクセを体に覚え込ませて、素早い発注ができるようになってから、スリッページや約定拒否の少ないFX会社でデビューするのがおすすめです。
最後に余談になりますが、証券投資用語のなかにもスキャルピング(スカルピング)という言葉があります。これは、自らが先回りして買っていた銘柄を顧客に買い推奨し、顧客の取引によって価格が上昇したところで、自らが保有していたものを決済して利益を得るという、投資顧問法によって禁止された不正行為のことを指します。ご紹介した、超短期売買手法のスキャルピングとは別物です。
(最終更新日:2021年4月5日)
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