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米国には米雇用統計のほかにも、雇用情勢を示すデータがたくさん存在します。民間企業による統計データもあり、一部は米雇用統計の結果を予測するうえで、重要な手がかりとされています。その中から、市場参加者の注目も高い「ADP全国雇用者数」と「新規失業保険申請件数」をご紹介します。
ADP全国雇用者数
ADP全国雇用者数は、全米約50万社の給与計算を代行する大手アウトソーシング会社ADP(Automatic Data Processing)が、自社の顧客を対象に雇用者数の動向を調査・集計したデータです。「ADP全米雇用報告」や「ADP民間雇用者数」、または単に「ADP」と呼ばれることもあります。正式名称は「ADP National Employment Report」です。
原則として毎月、米雇用統計の2営業日前に発表されます。NFP(非農業部門雇用者数)のサンプル数(約48万)に近いことから、NFPの結果を予測する重要な手がかりと位置づけられています。ADPの結果を受けてNFPの市場予想中央値が大きく変化することもある、注目度の高いデータです。
以下は、2003年以降のADP全国雇用者数の推移を表したグラフです。

※ADPのデータをもとに作成
※発表元により、過去のデータは修正されることがあります(最終情報取得日:2021年3月17日)
発表時間は、NY(米東部)時間の午前8時15分。日本時間だと米国が標準時間中は午後10時15分、米国がサマータイム(夏時間)中は午後9時15分になります。

ADP全国雇用者数の特徴
2002年5月分から発表がはじまったADP全国雇用者数は、かつてはNFPの結果と相関性が高いとは、決して言えませんでした。ADPの結果は良かったけれど、NFPの結果はそうでもなかったということが多かったのです(その逆もあります)。それが、米雇用統計後の相場変動を引き起こす原因となったことも、少なくありませんでした。
ADPとNFPの結果に大きな違いが生じる原因の1つに、NFPでは集計の対象となっている政府機関の就業者が、ADPには盛り込まれていないといった点もありました。2012年11月に、ADPは調査方法の変更を行い、過去のデータも新しい調査方法にもとづいて改定したため、現在はある程度の相関性が確認できるようにはなりました。しかし、NFPの結果と数万人単位でブレが生じることは、今でも珍しくありません。
以下は、2010年以降のADP全国雇用者数と非農業部門雇用者数の推移を表したグラフです。

※ADPと米労働省労働統計局のデータをもとに作成
※発表元により、過去のデータは修正されることがあります(最終情報取得日:2021年3月17日)
米雇用統計の参考指標として重要なデータであることは間違いありませんが、NFPと似たような結果にならないこともあるという点には、気をつけておく必要があります。
新規失業保険申請件数
新規失業保険申請件数は、米労働省雇用訓練局(ETA)が給与に関する業務を扱う州事務所の報告を受けて作成する、全米で前の週に失業保険の給付を初めて申請した人数を示すデータです。正式名称は「Initial Jobless Claims」で、日本でも「イニシャルクレイム」と呼ばれることがあります。「失業保険新規申請件数」とも言われます。
発表時間は毎週木曜日、NY(米東部)時間の午前8時30分。日本時間だと米国が標準時間中は午後10時30分、米国がサマータイム(夏時間)中は午後9時30分になります。

失業者が増加すると、失業保険の給付を申請する人は増え、失業者が減少すれば、申請者は減ります。そのため、雇用の状況を把握するうえで、高い注目を集める指標です。ただし、失業保険を申請できる人の割合は、失業者全体の半数以下とも言われているため、実際の失業者数は、データよりもずっと多いと考える必要があります。
米雇用統計の調査週にあたる、毎月12日を含む週の結果は、米雇用統計の結果を予測するうえでも、特に重要と位置づけられています。
以下は、2017年以降の新規失業保険申請件数の推移を表したグラフです。

※米労働省雇用訓練局のデータをもとに作成
※発表元により、過去のデータは修正されることがあります(最終情報取得日:2021年3月17日)
一般的には、新規失業保険申請件数が40万件、時期によっては30万件を下回ると、NFPの結果がプラスになる傾向が確認されると言われています。
新規失業保険申請件数の特徴
前週分のデータという速報性の高さはあるものの、翌週には数値がほぼ100%改定されます。週によって結果が大きくブレるという特徴もあります。気温や天候、カレンダーの並びなどといった季節変動要因の調整(季節調整)が施されているものの、調整した以上に件数のブレが大きくなることは頻繁にあります。過去4週間の結果を用いた4週平均などを使う方法が、中長期的な推移を見極める分析手法として取り入れられています。
新規失業保険申請件数は、景気の動きに敏感に反応する指標としても知られています。具体的には、景気がピーク(最盛期)やボトム(底)をつける2~3カ月前に、新規失業保険申請件数のトレンドが変わっていることが確認されています。そこから、新規失業保険申請件数が増加傾向に転じたときは好景気の終わり、減少傾向に転じたときは不況の終わりが近いと予測することができると考えられています。
そのほかの米雇用データ
米国の労働市場の状況を示すデータにはほかにも、イエレン元FRB(米連邦準備制度理事会)議長が注目していたことで知られる、米労働省労働統計局が発表する「JOLT求人件数(求人労働異動調査)」、人材斡旋会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社が発表する「チャレンジャー人員削減数」、モンスターワールドワイド社が全米のオンライン求人情報を集計した「モンスター雇用指数」などが有名です。
また、ISM景況感指数、消費者信頼感指数などの経済指標にも、調査項目の中に雇用に関する項目が含まれていて、労働市場のセンチメント(市場心理)を把握するデータとして、分析に役立てられています。
(最終更新日:2021年3月30日)
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